細胞外小胞(EV)研究において、フローサイトメトリーはEVの検出・カウント・特性評価を同時に行うことができ、サンプルスループットを維持しながら粒子径とカーゴの違いを正確に示せる有用な分析装置ですが、ほとんどの市販されているフォローサイトメーターの検出限界は80 nmと、より小さいEVポピュレーションの検出ができないことが課題でした。
ナノフローサイトメーターCytoFLEX nanoは、40 nmの粒子のナノ粒子の高感度検出*を実現しました。4レーザー6カラー、5つの側方散乱光によりEVポピュレーションの効率的な特性評価を可能にします。
40 nmのナノ粒子を検出する高い感度
信頼性の高い機器パフォーマンスと一貫性のあるデータ品質
最適なEV実験のための柔軟性
CytoFLEXファミリーをベースにした設計
近年、細胞外小胞(EV)の機能や有用性が明らかになるにつれて、その解析の重要度は増していますが、同時に正確な解析の難しさも課題となってきています。サンプル中のEV はサイズ・組成・由来が異なり不均一であり、サンプルに含まれる個々のEV の違いを識別することは、生理学的プロセスや疾患におけるEV の役割を理解することに役立ちます。しかし、有意義な結論を導くに足る深度のデータが得られる解析手法がこれまで存在しませんでした。
フローサイトメトリーは、高い感度とスループットを提供する確立された技術です。粒子1 つ1 つを解析できるため、 フローサイトメトリーは不均一なEV の特性評価に最適です。しかし、フローサイトメトリーについてあまりよく知らない場合は、データの解釈方法を理解しないと、結果に自信を持つことができません。なぜなら、従来のフローサイトメーターは、100 nm 未満のEV の特性評価のためには設計されていないからです。
そこで、EV の特性評価のために開発されたのがナノフローサイトメーターCytoFLEX nano です。CytoFLEX nano は、40 nm* の小さなEV を容易に解析することが可能であると同時に、搭載する最大6 つの蛍光検出チャネルで正確な特性評価を行うことができます。
様々な種類の細胞およびEVの大きさ。CytoFLEX nanoは、最小40nmのEVの検出、特性評価、粒子径測定が可能。
EV は生理活性を持つ分子の運搬を担っており、放出した細胞から別の細胞の中へと移動し、特定の生物学的機能を実行します。EV 粒子のサブタイプ、構造、サイズは様々です。
EV を調べることで、その由来細胞および臓器の健康・疾患プロファイルについて、重要な情報を得ることができます。EV を検出し、計数と特性評価を行うことで、疾患の進行状態をより簡単に調べることができ、細胞・遺伝子治療に関連する新規治療法の改善につながることが期待されています。
しかしながら、従来のフローサイトメトリーでは、サイズが極めて小さいEV の評価は困難でした。現在、40 nm* の小さなEV の正確な定量、測定、同定が行えるのは、ナノフローサイトメーターCytoFLEX nano だけです。
市販のGFP エクソソーム標準液を使用して、単一の抗体染色を行いました。従来のフローサイトメトリーで検出できるのは最小100 nm までのEV のみであるため、特性評価は不完全ですが、CytoFLEX nano では、40 nm までの全てのEV の完全な特性評価が可能です。
高い感度と分解能を備えるCytoFLEX nano は、不均一なサンプル中に存在する、これまでは捉えることのできなかったsmall EVs の特性評価が可能なため、サンプルからより示唆に富む情報が得られます。感度が非常に高いため、small EVs、タンパク質複合体、脂質、コレステロールなど、研究の可能性が広がります。
さらに、CytoFLEX nano は分解能が優れているため検出下限がより低く、これまでより小さなEVとそれらに内包された極めて微量のカーゴを識別することができます。粒子径10 nm 差を検出することができるため、多分散集団* を適切に評価することが可能です(Figure 3 参照)。CytoFLEX nano では、散乱光強度と蛍光強度とを組み合わせることで、表面抗原、カーゴや核酸のそれぞれのマーカーを詳細に調査できます。このため、サンプル間での希少なイベントを区別して同定し、その特性を評価することができます。
CytoFLEX nano を用いて最小40 nm を含む様々なサイズのポリスチレンビーズを検出しました。
これらの散乱光から、CytoFLEX nano による粒子径測定の分解能の高さが分かります。
EV 集団の分析にナノフローサイトメーターCytoFLEX nano を使用する主な利点の一つは、より小さな粒子集団を効率よく特性評価できることです。CytoFLEX nano は最大6 チャネルでのフェノタイプ解析が可能で、EV に適した多種多様な蛍光色素を使用できます。そのため、より柔軟な実験設計が可能で、制約が少なく、必要なデータを収集できます。
5 つの側方散乱光チャネルを搭載しているため、研究の幅が広がります。蛍光色素を用いて同定や分離を行うのではなく、様々な散乱物質の比率を分析することで、新たなポピュレーションを解析できます。
CytoFLEX nano では、不均一サンプル中の様々なサイズのEV を簡単に識別できます。
市販のrEV(SAE0193、Sigma-Aldrich)を2カラーの散乱蛍光を用いて解析し、サンプル中のサイズの異なるEV を検出しました。
ナノフローサイトメーターCytoFLEX nano には装置のコンタミネーションを自動で見つけて清浄化するツールが搭載されているため、クリーンアップの負担が減り、結果の信頼性も確保できます。この自動化システムによってサンプル間のキャリーオーバーが1% 未満に抑えられるため、計数結果は常に正確で一貫したものとなり、信頼できるデータが得られます。また、目詰まりを防止して装置性能を常に一定の状態に保ち、手作業やメンテナンスに必要な時間を最小限に抑えます。さらに、CytoFLEX nano は高精度・低容量シリンジポンプを使用しており、サンプル間の粒子計数測定のカウント精度90% を達成しています。
CytoFLEX nano には、「システム」、「清浄度」、「感度」の3 段階のプロセスによる品質管理(QC)システムが内蔵されています。このQC ワークフローでは、装置の一貫性とデータの信頼性を確保するため、いくつか追加のチェックが行われます。追加のチェックは自動で行われるため装置の操作は必要なく、時間を無駄にしません。
モデル | CytoFLEX nano |
---|---|
製品番号 | D02028 |
搭載レーザー | Violet 405 nm:120 mW Blue 488 nm:50 mW Yellow 561 nm:35 mW Red 638 nm:100 mW |
検出器 | 前方散乱光:Silicon-フォトダイオード 側方散乱光、蛍光:Avalanche Photo Diode detector arrays(FAPD:Fiber Array Photo Detector) |
散乱光 | 前方散乱光:1 個 (内訳:405 nm [405/10 nm bandpass fiker] 1 個) 側方散乱光:5個 (内訳:405 nm [405/10 nm bandpass fiker] 2 個, 488 nm [488/8] 1 個, 561 nm [561/6] 1 個, 638 nm [638/6] 1 個) |
蛍光検出 | 6個 |
前方散乱光 測定レンジ | 300 nm 以上 ポリスチレンビーズ |
側方散乱光 測定レンジ | VSSC1:40 ~ 150 nm ポリスチレンビーズ、 VSSC2:80 ~ 1,000 nm ポリスチレンビーズ |
側方散乱光 解像度 | VSSC1: 10 nm |
蛍光分解能 | rCV < 10%(QC Fluorospheresを 1 μ L/minで測定時) |
最大データ取得速度 | 16,000イベント/秒(取得設定した全パラメータのデータを含む) |
タンク | シース液 10 L:使い捨ての液体コンテナ、 廃液 10 L:使い捨ての液体コンテナ、 洗浄液 5 L:使い捨ての液体コンテナ |
サンプルフローレート | 1~6 μ L/minで可変( 1 μ Lきざみ) |
寸法(W X D X H) | 本体:59 × 50 × 44 cm、 溶液タンクユニット: 37 × 89 × 33 cm |
重量 | 本体:45 kg、 溶液タンクユニット:22 kg(クリーニング液・シース液:最大容量、廃液:空の時) |
電源・消費電力 | AC 100~240V、 50/60Hz、 200VA |
設置条件 | 15 ~27℃(動作中の基本変化±2℃以内)、 湿度20~80%(ただし、結露しないこと)、 高度2,000 m以下 |