Multisizer 4eは、コールター原理(コールターカウンター法)を用いて0.2 ~ 1600 μmの範囲で細胞や微生物の数、体積、濃度を測定する高精度なセルカウンターです。DPPテクノロジーにより、他の既存技術では不可能な、 1 mLのサンプルから粒子1つを検出するなど極めて高い分解能と精度を実現します。分析結果は粒子の形状、組成、光学的特性に依存しません。
細胞径は、細胞サイクル、浸透圧調節、細胞死、発症機序、その他の生物学的研究の重要なパラメータです。Multisizer 4eは、細胞径の変化をリアルタイムに検出できます。データ比較とグラフィカルサマリ機能により、経時的な研究プロセスが容易になります。
セルカルチャーの増殖に最適なパラメータを選択し、増殖や目的物質が培地に与える影響を研究するためには、培地中の細胞濃度を正確かつ迅速に求めることが重要です。
直径が10 μmのアパチャーは、200 nmという小さな細胞内小器官を検出できるため、ミトコンドリアやリポソーム研究のセルカウントに新たな可能性を拓きます。
コールター原理は、電気的検知帯法や現在のISO12219の規定名では液体体積置換法とも呼ばれています。粒子が検知帯(アパチャー感応領域)を通過する際に生じる、2電極間の電気抵抗の変化を測定します。電解質溶液中に懸濁させた粒子が、バキュームによりアパチャー(細孔)の検知帯を通過する際に、粒子体積分の電解液が排除されます。この排除された電解液の体積を電圧パルスとして測定します。このパルスの大きさが粒子体積に、パルスの発生数が粒子数になります。これによって、粒子の正確な体積から粒子径分布(粒度分布)と粒子数を測定することができます。
Multisizer 4eは、フルレンジで0.2~1600 µmの範囲で測定でき、検出するセンサーを付け替えることで、特定の範囲を精密測定する、高精度なセルカウンターです。小粒径アパチャー用の高度なノイズリダクションシステムにより、測定精度が高く、得られたデータは特許取得済みのデジタルパルスプロセッサ(DPP)テクノロジーを用いて処理・保存され、後で再解析することができます。DPPテクノロジーによって、最適に設定された機器を用いた場合、1 mLのサンプルから細胞1つ1つを検出するなど、ほかの既存技術では不可能な、極めて高い分解能と細胞計数精度を実現します。分析結果は細胞の形状、組成、光学的特性に依存しません。
Multisizer 4eのソフトウエアは、いつでも同じ条件で測定して安定したデータが得ることができるように、SOP(標準操作手順)を設定できる機能が搭載されております。これによってアプリケーション、オペレータ、装置、および設置場所などを問わず、あらかじめ設定したSOPを選択して、細胞径分布、体積計測、凝集物やスフェロイドの計測が簡単に解析可能です。
細胞計数・サイズ分布・体積計測を解析することで、薬剤が組織培養細胞の増殖、細菌の増殖速度、加齢に伴う細胞サイズの変化への影響、および他の生物医学に関する項目にまで、多くの貴重な情報を得ることができます。
細胞の体積は以下のような多くの生物学的プロセスで変化します。
例えば、培養中の増殖細胞は、分裂する前に体積が二倍になる傾向があります。しかし、どのように増殖速度および分裂速度が連動して、細胞サイズが維持されているのか分かっていません。細胞の体積の変化を知る方法の確立は、細胞の増殖と細胞周期を制御する重要な要因になります。
また、適切な細胞数の維持は、細胞増殖と細胞死との間の絶妙なバランスにより成り立っています。このようなバランスにより、細胞が機能的な変化(=細胞数など)が必要なときには、細胞にとって最適な方向へ適応します。細胞死は、少なくとも2つの異なる機構(壊死とアポトーシス)によってなされています。壊死は、細胞膨張、細胞膜の破壊およびそれに伴う細胞内内容物の放出による病態生理学的なメカニズムです。一方、アポトーシスは、プログラムされた細胞死を引き起こすメカニズムです。アポトーシスの特徴の1つに細胞収縮があります。癌を含む多くの疾病モデルは、細胞増殖とアポトーシスのバランスをとるための制御機構が不均衡かつ機能不全になることによって引き起こされると考えられています。
コールター原理は、細胞数・サイズ・体積を研究する上で最も普遍的かつ適応性に富んだ技術の1つです。
コールター法を用いたセルカウントだけでなく、細胞のサイズ・体積変化を解析することで、多くの貴重な情報を得ることができます。
ライフサイエンス研究の対象となるサンプルは、細菌、微生物、細胞内小器官、細胞と多岐におよび、全てがコールター法で測定できる対象です。ここでは、コールター法を用いた代表的な測定例を紹介します。
Multisizer 4e は、0.2 μmを測定下限値としたセルカウント、サイズカウントが可能なため、黄色ブドウ球菌、大腸菌、そして乳酸菌などの平均粒子径1 μm前後の細菌類を計測することが可能です。
さらに、コールター法は、わずかなサイズ差を識別したり、正確な個数を計測することが可能なことから、わずかなサイズ差からの菌種の識別や、単位容量当たりの菌数計測、フィルトレーション後の菌数計測も可能です。
黄色ブドウ球菌(S.aureus)sのサイズ分布
(平均粒子径:1.007 μm)
薬剤耐性黄色ブドウ球菌MRSA*とVRSA**のサイズ分布†
(平均粒子径:MRSA 1.022 μm, VRSA 1.088 μm)
大腸菌(E.coli)のサイズ分布
(平均粒子径:1.079 μm)
ビール生産における発酵停止後の酵母のフィルトレーション効果
(アパチャーチューブ50 μm使用)
シアノバクテリア(Cyanobacteria)は、クロロフィルを光合成色素として持つ単細胞の原核光合成微生物で、近年は、有用物質やバイオ燃料の大量生産のために産業利用が検討されている微生物です。これらの生産の産業化のために、細胞増殖の最適な条件の検討に、細胞サイズと細胞数が重要なパラメータとなります。また、貝類の中でも、食用、環境浄化用途など、付加価値の高い貝類は、幅広く養殖されている海産物で、効率的な繁殖のために、給餌に利用されるプランクトンのサイズと濃度評価に、Multisizer 4e を利用することが可能です。
緑藻綱コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii )の同調培養における細胞の二つのサブポピュレーション。単一ポピュレーションの親細胞が分裂して生じた娘細胞のサブポピュレーションの光学顕微鏡による定性的分析(A)、および、Multisizer による定量分析(B)。Author: K. Bišová.
淡水イガイ(ろ過食性二枚貝)の繁殖のため食料源とする藻類(植物プランクトン)の限界粒子径や濃度分布
細胞療法の一つであるCAR-T 細胞療法は、白血球の一種であるT 細胞へ遺伝子(CAR)を導入することにより樹立したCAR-T 細胞を用います。CAR-T 細胞が標的となるがん細胞を認識し、自身の免疫システムを活性化することでがんを攻撃します。T 細胞は活性化、増殖刺激により細胞の体積が大きくなることが知られています。この性質がCAR-T 細胞にも保持されている必要があります。Multisizer 4e により細胞の体積を計測することでCAR-T 細胞作製時の品質を評価することが可能になります。
Multisizer 4eを用いたT細胞の各Stageの体積変化
スフェロイドは、数千個の細胞同士を凝集させ3 次元培養によって立体的に構築された細胞塊で、再生医療や固形癌に対する薬効評価に利用される組織です。幹細胞由来細胞によるスフェロイドを作製して、Multisizer 4e を用いて細胞塊の計数と体のを測定をすることで、再生医療に用いるスフェロイドの品質を評価します。
株化細胞由来スフェロイドを作成し、個数、大きさ、体積を評価しました。スフェロイドの形成が維持された状態では150 μm以上の大きさを維持できますが、維持されない場合にはスフェロイド径およびその体積が減少します。Multisizer 4e を使用することで、二次元画像では得られない三次元のスフェロイドの状態を評価できます。
顕微鏡下で観察したときに丸いスフェロイドで観察されても(上部イメージ図)、スフェロイド内に空隙が生じている場合(下部イメージ図)、Multisizer 4e は正確に体積を計測可能であるため、顕微鏡では観察が難しい三次元のスフェロイドの状態を体積から観察できます。
Multisizer 4eは、工業分野における材料製品の品質管理などの測定目的に合わせて、様々なサイズをアパチャーチューブを用意しております。
直径10 ~ 2,000 μmまでの幅広いアパチャーをご用意。
拡張ダイナミックレンジを用いた計測可能範囲がアパチャー直径の2 ~ 80%であるため、アパチャーを頻繁に取り換える必要がなく、解析のオプションが広がります。
アパチャー部分の詰まりは機器が自動で検出し、除去します。
サンプル、電解液、アパチャーのサイズ、サンプルブレーカーに関する情報をバーコードで素早く読み取ります。
読み取った情報は自動でアウトプットされます。
EZAccess(電解液マネージメントシステム)でタンクの電解液レベルをモニタリングし、電解液の追加が必要、あるいはボトル*に廃液が満杯になったら警告を表示します。
*廃液ボトルのサイズが写真仕様から変更され、電解液ボトルと同じサイズになっております(2023年1月時点)
スターラの速度と方向を選択して、懸濁液中に粒子を均等に分布できます。
ポジションと速度はSOMに記憶されるため、いつでも同じ条件で解析できます。
外部環境のちり・ほこりなど、測定のバラつきの元となるノイズからの保護を実現しています。
Multisizer 4e では、全てのアパチャーに100~400 mL のガラス製ビーカー(上写真)が使用できます。このMultisizer 4e 用のビーカーは、より正確に測定するために、均一に攪拌できるようにデザインされております。100 μ m 以下のアパチャーを使用する場合は、25 mL の使い捨てアキュベットST が使用できます。
製品名 | Multisizer 4e |
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粒子径分布測定範囲 | 0.2~1,600 μm(直径) 0.004~2.145 X109 fL(μm3)(体積) |
アパチャー径 | 10μm~2,000 μm(公称直径) |
ダイナミックレンジ | (粒子直径)標準時30:1 トータル40:1 (粒子体積)標準時27,000:1 トータル64,000:1 |
チャンネル分解能 | 4~400チャンネル(任意設定可能)、最大11000チャンネル相当(超高分解機能使用時) |
電解質溶液 | 水溶液または有機溶媒*の使用可 (*ガラス、フッ素樹脂、フッ素エラストマー、ステンレスが耐えられる液) |
パルス波形データ数 | 1回の測定で最大525,000パルス |
粒子径分布データ | 粒子径に対する個数、体積、表面積基準のパーセント(%)、粒子の濃度(個/ mL)、絶対数、 |
直線性 | (直径)±1%以内 (体積)±3%以内 |
時間設定モード | 0.1~999秒、10ミリ秒単位で設定可能。通常は10~90秒の範囲設定 |
定量分析モード | 50~2,000 μLの範囲で連続的に設定可能 |
全カウントモード | 50~500,000カウント |
最頻カウントモード | 10~100,000カウント |
ソフトウエア | Windows7 |
設置条件 | 温度:5~40°C/湿度:10~80%で結露が無いこと/高度:2,000 mまで |
オプション | V-Check プログラム |
寸法 | 640(W)×610(D)×510(H)mm (本体) |
重量 | 45Kg(本体) |
電源 | AC単相100~120 V ± 10%、47 Hz~63 Hz、55 VA(W)未満、3種以上のアース必要 |