コールター原理と粒度分布測定

コールター原理は、W.H.Coulterが発明した電気抵抗を利用した粒子測定原理で、粒子が細孔を通過する際に生じる、2電極間の電気抵抗の変化を測定します。この電気抵抗は、通過する粒子の体積に正確に比例しています。細孔を通して流れるサンプル懸濁液の量は精密に制御されていて、粒子の正確な体積から粒径と濃度を極めて高精度で測定することができます。超高分解能で粒度分布測定が行なえます。さらに粗大粒子(異物粒子や擬集物)の濃度測定(個数)も可能です。

はじめに

Coulter Counter model A1940年代後半、Wallace H. Coulter によって、電解質溶液中に分散した粒子の個数と粒子体積を電気を用いて、正確に測定する技術が発明され、コールター原理と呼ばれ、Coulterはこの特許を取得しました。この技術に基づいた分析装置は、1953年に製品化され、Coulter Counter Model A(右写真)と呼ばれました。当初は、用途が見つからず、やがて細胞や血液の算定分析を自動化する医学部や検査室向けの用途が見つかり、爆発的に普及しました。その後、改良が加えられ、電気パルスを解析して、ヒストグラムにすることにより、精密な粒度分布が測定できるようになりました。1961年、Coulter Counter Model C(左下写真)を発表しました。(右下写真は、その改良機 Model C-1000 1975年頃)

今日では、工業用途においても非常に有益な高精度粒度分布測定装置としていろいろな業界、多くの研究所・工場・大学等で使用されています。

コールター原理とその特徴

コールター原理は、細孔電気抵抗法(電気的検知帯法)と呼ばれ、電解質溶液(電解質の溶けた水溶液または有機溶剤)中の小さな径の細孔(アパチャー)に一定の電流を流し、その系の電気抵抗を計測します。電解質溶液中に粒子を均一に懸濁させ、陰圧により細孔を粒子が細孔を通過するようにします。粒子が細孔を通過すると、粒子体積分の電解質溶液が置き換えられたことになります。この置き換えられた電解液の体積によって、細孔の電気抵抗(インピーダンス)が増加します。一定電流を供給することにより、インピーダンスの変化は、電圧パルスの変化によって計測できます。この電圧パルス高を1個ずつ計測処理して、粒子の体積分布ヒストグラムが得られます。

コールター原理は、他の粒度測定方法とはまったく異なり、粒子を1個ずつ高速で測定し、かつ粒子の形状や、屈折率、色、密度などの影響を受けないことから、極めて精密な粒度分布測定が可能で、多くの国内規格および国際規格にされており、コールター原理に基づく測定方法ならびに装置は、他の粒度分布装置及び粒径測定技術の評価における基準値として用いられています。

粒子が細孔中心を通過しない場合、電圧パルスの波形が歪みます。細孔の周縁部は、電流密度が高く、また流れが遅くなっているからです。また、同時に2個の粒子が通過した場合も電圧パルスが歪みます。このような電圧パルスでは、正確な粒度分布を測定することはできません。

進化したコールター原理

このような歪んだパルスを発生させないために、ラミナーシースフローを用いたフローサイトメトリー法が生まれました。一方、最新のデジタル技術は、この歪んだパルスを復元することができます。 最新のモデル Multisizer 4では、画期的なデジタル波形解析処理回路(DPP技術)を開発し、1秒間に数百万回、パルスをサンプリングして、歪んだ波形を、正確に正規分布の波形にリアルタイム処理で復元補正することができます(デジタルコールター原理)。これにより、フローサイトメトリー方式を用いないので、高濃度でも正確な粒度分布測定が可能になりました。測定時間は通常、数秒~数十秒程度です。

コールター原理では、細孔の口径を変えることにより、測定範囲を変えることができます。小さな粒子を測定する場合は、小さな口径を、大きな粒子を測定する場合は、大きな口径を使用します。(細孔径 20から2,000ミクロン: 測定範囲0.4~1,200ミクロン) 交換は1分以内で簡単に行えます。

一般に工業製品は、生物試料ほど均一ではないので、広い粒度分布を持ちます。そのため、Coulter Counterも改良され、Multisizer 4は、細孔径の2%から80%(当初は40%)までの粒子径を測定することができます。また、同時にこの広い測定範囲全体をカバーする電気回路(ログ変換回路)が必要ですが、当時は直線性の良いログ変換回路は、まだ開発されておらず、工夫を重ね独自の方法で解決をしました。

最新のモデル Multisizer 4 では、100万チャンネル以上の超高分解能のA/D変換処理回路を装備して、測定完了後、測定範囲を自由に絞り込むことが可能で、400段階(チャンネル)のヒストグラムで高分解能(最高表示分解能5nm)表示することができます。

試料は、粒子表面と水溶液との間に抵抗を持ち、導電性試料でも、電流が内部を通過することはほとんどありません。非常に高い導電率を持つ金や白金などの粒子の場合は、低い電圧を使用することにより、その誤差を最少化することができます。また、標準物質を試料と同じ素材の物質にすることにより、この誤差を無くすことができます。

コールター原理は粒子を1個ずつ3次元で計測し、検出時の通過方向の影響を受けません。また、体積の変化は、粒子径の変化の3乗の変化量になるので、高分解能で検出できます(最高分解能10nm)。 工業分野では、粒子を直径で表すのが慣習となっているため、測定された粒子体積を球相当径(ESD)に数学的に変換します。コールター原理で測定した“粒子径”とは、その粒子と同じ体積の球の直径になります。なお、生物学および医学分野では伝統的に、フェムト・リットル(fL)または立方ミクロン(mm3)などの体積単位を用いています。

国際規格ISO13319「Electrical sensing zone method」には、コールター原理を使った粒度分布測定に関する手引きが記載されています。

さらに、コールター原理は、1個ずつ測定するので、電圧パルス数をカウントしながら、細孔を通過する懸濁液の流量を測定すれば、懸濁液中の粒子濃度も求められます。溶液中の異物測定や、プランクトンの濃度などの測定にも応用されています。

測定データ集はこちらにあります。