| インタビュー

【前編】エクソソーム研究の今と未来

6. エクソソーム研究の今後の動向 : まとめ

落谷先生:エクソソームに反映される疾患バイオマーカーの解析によって診断におけるエクソソームの有用性への注目が高まると同時に、近年では、エクソソームをターゲットにした、またはエクソソームそのものを用いた治療法の開発が活発に行われるようになりました(図3)。後者については、既に複数の臨床試験が行われており、患者自身もしくは他者のMSC由来エクソソームを応用した治療の安全性とその効果測定が行われています18)。そのほかに、エクソソームのdrug delivery systemとしての利用も今後ますます増える見通しです。

図3:“ヒーロー”エクソソームの利用法

A.エクソソームの生理的な機能の回復、放出量の正常化

B.細胞が分泌するエクソソームの効果をそのまま治療やワクチンとして利用、または治療薬を導入してDDSとして応用する
「西田奈央. In 落谷孝広・吉岡祐亮編 医療を変えるエクソソーム ー生体機能から疾患メカニズム、臨床応用までー 化学同人2018;p.203, 図26.1」より改変
(著作権者の承諾を得て、改変・転載)

また、植物由来のエクソソームのヒトへの作用を調べる試験も最近なされており、生物の界を越えたエクソソームを介した健康への影響が注目されています。消化管内では、植物のほか、腸内細菌、病原性微生物、食物中の酵母などが、常時相互に作用する関係を築き上げており、これら異種生物コミュニティが産出するエクソソームが哺乳類の消化管細胞に与える影響によっては、ホメオスタシスの変化、感染の成立やがんの発症などにつながることが考えられています24)

その一方で、がん細胞の“悪役”エクソソームに作用する可能性を秘めるものとして、がん細胞のmiRNAの発現を制御して細胞増殖の抑制・アポトーシスの促進をすると報告されたクルクミンやケルセチンのような植物成分が考えられます25)。このような天然成分を摂取することで、細胞の状態を整え、“ヒーロー”エクソソームの放出を促すことで、予防医療へ繋がるとも考えています。

今後のエクソソームの研究発展のカギとして、エクソソームを含むEVsの全体像をつかむことが求められています。そのheterogeneityをより深く理解するためには、エクソソームの回収と同定の技術的な進歩が必須です。

※3 核酸のうち、DNAがエクソソームの内包物として存在するかどうかについて統一した見解はなく、エクソソームの周りに付着しているだけという報告があります。

参考文献
18)西田奈央. In 落谷孝広・吉岡祐亮編 医療を変えるエクソソーム ー生体機能から疾患メカニズム、臨床応用までー 化学同人2018; p.201-210
24)Barteneva NS et al. Biochim Biophys Acta Rev Cancer. 2017; 1868(2): 372-393
25)Otsuka K et al. Mol Nutr Food Res. 2018; 62(1): 1700080

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