| インタビュー

【前編】エクソソーム研究の今と未来

5. “ヒーロー”エクソソームによる治療への展望

落谷先生: 体内で生理的な役割を担う“ヒーロー”エクソソームは多く存在します18)。それらエクソソームを介した細胞間クロストークは多様で、前述の免疫細胞のほか、ニューロン-グリア細胞間などの情報伝達も制御します。

また、近年体内の組織再生(リニューアル)に必須な間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stromal/stem cell)由来のエクソソームが注目されています。MSCは、骨、脂肪、軟骨、歯髄、臍帯組織などに存在し、免疫機構、抗炎症作用も調節しますが、MSCはエクソソームを放出することでその機能を発揮していることが明らかになりました19)。ヒト骨髄または臍帯血から得られたMSC由来のエクソソームの投与によって、動物疾患モデルにおける心機能、腎機能、炎症や細胞障害の指標の改善が報告されました20-22)。まだ臨床試験の報告は限られていますが、慢性腎臓病患者の第Ⅱ/Ⅲ相パイロット試験において、臍帯血MSC由来エクソソームが投与され、その安全性、そして一時的ではあるものの、腎機能の改善効果が示唆されました23)。再生医療目的で細胞そのものを移植する代わりに、MSC由来エクソソームを用いることで、細胞治療に伴うリスク(移植後の肺塞栓など)を軽減した治療法の開発が期待されています。

参考文献
18)西田奈央. In 落谷孝広・吉岡祐亮編 医療を変えるエクソソーム ー生体機能から疾患メカニズム、臨床応用までー 化学同人2018; p.201-210
19)Fatima F et al. Front Genet. 2017; 8: 161
20)Lai RC et al. Stem Cell Res. 2010; 4(3): 214-222
21)Nargesi AA et al. Stem Cell Res Ther. 2017; 8: 273-284
22)勝田毅・落谷孝広. In 落谷孝広・吉岡祐亮編 医療を変えるエクソソーム ー生体機能から疾患メカニズム、臨床応用までー 化学同人2018; p.56-65
23)Nassar W et al. Biomaterials Res. 2016; 20: 21-31

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