| インタビュー

【前編】エクソソーム研究の今と未来

4. エクソソームを治療ターゲットに

落谷先生: 疾患特異的なバイオマーカーになるエクソソームの情報が蓄積されてきて、その内包物の病態への関与もわかってきました。そのような“悪役”エクソソームを標的にした治療法の開発を目指した研究も行われています。例えば、がん細胞はホストの体内で生き延びるために正常な細胞に比べエクソソームを多く放出することがわかっています。従って、そのエクソソームの分泌を抑制する、もしくは既に放出されたものを選択的に取り除いたり目的細胞への取り込みを阻害したりすることによって、がん細胞の活性を阻止できる可能性が考えられています(図2)

図2:がん細胞由来の“悪役”エクソソームに対する選択的阻害ポイント

「西田奈央. In 落谷孝広・吉岡祐亮編 医療を変えるエクソソーム ー生体機能から疾患メカニズム、臨床応用までー 化学同人2018; p.204, 図26.2」より改変
(著作権者の承諾を得て、改変・転載)

治療ターゲットにするためには、生理条件下の正常細胞のエクソソームの性質やその制御機構を十分理解する必要があります。生物が本来備えているホメオスタシスや免疫機能が、エクソソームを介した細胞間のクロストークに一部依存して成り立っていることがわかってきました。疾病にかかわる“悪役”エクソソームに対して、こうしたエクソソームのことを私は“ヒーロー”エクソソームと呼んでいます。例えば、ナチュラルキラー細胞を中心とした自然免疫機構を制御しているマクロファージのエクソソーム、また、抗腫瘍免疫系においてがん細胞の浸潤性や転移能に関与する間質細胞を阻害する細胞傷害性T細胞(CTL)のエクソソームなどです。

つまり、エクソソームの正常な働き方や性質を維持・回復する手段が解明されれば、多くの疾病に対する治療につながる可能性が考えられます。この考え方は、がん細胞を攻撃するという本来体内で働くべきしくみを正常化する点では、2018年のノーベル医学生理学賞を受賞された本庶佑先生17)が提唱された免疫チェックポイントの概念と類似しています。

参考文献
17)Nobel財団プレスリリース

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