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培養上清からのエクソソーム回収と
タンパク質およびmiRNA抽出方法の基礎

培養上清からのエクソソーム回収とタンパク質およびmiRNA抽出方法の基礎

がん原遺伝子のSrcとエクソソームのご研究をされている愛知県がんセンター研究所 腫瘍制御学分野 分野長でいらっしゃる小根山千歳先生に、エクソソーム研究の基本であるエクソソームの分取方法、分取したエクソソームからのタンパク質およびmiRNAの抽出についてお話をしていただきました。

1. 先生のご研究背景について

「がん」は細胞の恒常性が破綻した状態です。その要因としては様々な遺伝子変異が知られていますが、私はむしろ「がん」に特有な形質がどのような分子メカニズムを介して出現し、維持されているのかに注目しています。「がん」で異常となっているメカニズムに働きかけ、正常に近いような状態に回復させれば、がんの形質自体を抑制することができると考えています。抗がん剤のように細胞を殺すことなく、破綻した恒常性を元に戻す方法が見つかれば、より安全性が高い次世代のがん治療につながる可能性があります。現在、なぜ、どのように恒常性が破綻したのかという疑問を詳しく知ることによって、分子病態を明らかにしようとしています。

私は20年弱、がん原遺伝子の1つであるSrcに着目して研究を行ってきました。Srcは最初に見つかったがん原遺伝子で多くの研究が行われてきましたが、まだ多くの謎があり、ヒトのがんにどうかかわっているかについても不明です。Srcはがんで重要であるだけでなく、正常細胞でも必須の役割を果たしています。Fig.1にSrcがかかわるシグナル経路を示しました。細胞外のシグナルを受容体などが受け取ります。Srcは受け取った細胞膜の直下に位置し、受容体などのシグナルを細胞内に伝播するという役割を持っており、シグナル経路のいわば急所となっています。Srcの活性化により、細胞の生存、動き、増殖などが制御されています。このようにSrcは正常細胞でも重要ですが、がんの病態では異常に活性化しており、Srcという分子の観点から、がんを見直そうと考えています。つまり、Srcのシグナルを制御しているメカニズム(Fig.1)が破綻することによって正常細胞をがんに向かわせていると考えています。

Fig.1 :細胞内シグナルの急所 Src
Srcは増殖因子やインテグリンからの細胞外シグナルを様々な下流の細胞内シグナル経路に伝達する中継点である。

これまでSrcの活性化によって様々なmiRNAの発現量が変化しがんの形質が制御されていること(Fig.2)や、さらにエクソソームの分泌量や内包物の選択といったエクソソームの形成制御にSrcが関わっていることを見出してきました。この研究を進めるために、毎日培養上清からエクソソームを分取し、そのエクソソームからタンパク質やmiRNAを解析しています。

Fig.2 :Srcシグナルを制御するmicroRNAネットワーク
Oneyama, J Biochem, 2015; Reviewより引用

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