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密度勾配超遠心分離法を用いたエクソソームのサブクラス解析

2. 密度を切り口としたエクソソームのサブクラス解析

エクソソームと呼ばれる『脂質二重膜がからんだ何か』をみるための1つの方法として、密度による分画に注目しています。脂質の袋の中に核酸やタンパク質等が入っているのがエクソソームで、この脂質の袋は軽いので、その特性を利用して密度で分画できます。このため、超遠心機を用いています。

そのほかに試薬等のキットでエクソソームの回収をする市販の方法もいろいろと見受けられますが、分離原理や試薬名を公表していないキットも多く、エクソソームそのものは何かという基礎研究に用いるのは、少々抵抗があります。私たちは、エクソソームのサブクラス化等に興味を持って研究を進めていますので、その辺りの研究を進めるとなるとキットではなく超遠心法による精製という選択になります。超遠心法ですと理論的、かつ網羅的にエクソソームを分画でき、取りこぼしがありません 1, 2)

密度分画までは行わないで、超遠心で沈殿してくるものをエクソソームとする、いわゆる超遠心法も、エクソソームの分離にしばしば使われています。しかし、超遠心で沈殿してきただけの、いわゆるエクソソーム「粗分画」には、いろいろなものが入っていますので、解釈に慎重になる必要があります。余裕があれば、エクソソーム「粗分画」を、さらに密度勾配超遠心分離法で分画するに越したことはありません。先ほど述べましたように、エクソソームは小胞に囲まれているので、タンパク質複合体などに比べて、軽い密度を持ちます。したがって、エクソソーム粗分画の上に密度勾配を形成させ、超遠心処理を行うと、密度の小さいエクソソームは浮いてきて、自らの密度に一致する場所にとどまります(Fig. 2)

Fig.2:平衡密度勾配超遠心法 概要

浮いてくるものがすべてエクソソームだけだとは私たちも思っておらず、あくまで候補として扱っています。その中で、エクソソームのサブクラスや、非エクソソームを定義していくという研究を行っています。

現在、エクソソームは大まかに密度で2つのクラスに分けられることを確認しています。さらに、一番密度の小さい分画には大きな脂質二重膜の袋があり、タンパク質がほとんど含まれない空の袋が存在しているようです。さらに大きい小胞も存在すると思われますが、粗遠心の段階で除かれてしまっています。大きな小胞も観察したいなら、粗遠心する前の試料をそのまま密度で分けた方がよいのかもしれません。

また、密度勾配遠心での挙動から、エクソソームのサブクラスを分けていくことが可能です。例えば唾液由来エクソソームの場合、CD9陽性エクソソームが、CD63陽性エクソソームと異なる挙動を示すために、これらのマーカーがエクソソームのサブクラスを規定することが示唆されます 3)

エクソソームをサブクラス化することで、例えば診断のためのエクソソーム情報の量を飛躍的に増やすことができます。エクソソームは放出した親細胞の情報を「パッケージ」で運んでいますので、1粒子レベルで、これらの情報を引き出すことが理想ですが、これはなかなか大変な作業です。そのため、サブクラスに分けた情報を引き出すだけでも、現在のバルクで解析して平均値を用いているよりは、ずっと情報量は増えます(Fig. 3)

Fig.3:サブクラス分けによる診断としての情報量

私たちは、唾液中のエクソソームの密度によるサブクラス解析を行うことで、口腔内疾患のみならず糖尿病や骨粗鬆症のような全身疾患の非侵襲的診断法の実現を目指しています。次章では、粘度が高く回収が難しいサンプルである唾液中のエクソソーム精製に関して説明します。

参考文献
1)Johnstone RM, et al., J Biol Chem. 1987; 262: 9412-20
2)Pan BT, and Johnstone RM, Cell 1983; 33: 967-78
3)K Iwai et al., Journal of Extracellular Vesicles 2016, 5: 30829

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