エクソソームの基盤技術に焦点をあてたご研究をされている、公益財団法人がん研究会がん研究所 蛋白創製研究部の部長でいらっしゃる芝清隆先生、ならびに同研究生で東京歯科大学口腔インプラント学講座の岩井千弥先生と山本恵史先生のお三方に、エクソソームの密度によるサブクラス解析、および精製方法と注意点についてお話をいただきました。

Ⅲ. 平衡密度勾配超遠心分離法を用いた精製方法と注意点

i. 平衡密度勾配超遠心分離法

 私たちは、平衡密度勾配超遠心分離法を使用した密度による分画をメインで行っています。実際に平衡に達しているか確認することが重要で、ボトム側にサンプルを置き浮上させる場合と、トップ側にサンプルを置き沈降させる場合の実験を同時に行い、エクソソームの存在を示すマーカー(CD63, CD81)が同じ密度のフラクションに存在すれば、平衡になっていると判断しています(Fig. 4)。そして、密度勾配の材料はショ糖を使う場合が多いですが、私たちはOptiPrep(化合物名Iodixanol)を用いています(Fig. 5)。OptiPrepを用いた方が、上の判断基準では平衡に達しているケースが多いためです。ボトムからの平衡密度勾配超遠心分離法の場合、ショ糖だと十分に浮上せずに途中で止まってしまうことが多いのですが、OptiPrepを用いると妥当な位置まで浮上し、トップからの平衡密度勾配超遠心分離法の位置と一致します。

Fig.4 平衡状態の確認
Fig.5 密度勾配媒体

ii. スウィングロータによる精製

 Fig. 6に、私たちが行っている唾液からの平衡密度勾配超遠心分離法のプロトコールを示しました 3)。唾液からのエクソソーム回収は、培養細胞のプロトコールをそのまま使うことはできませんでした。そのまま使うと、密度勾配でうまく分かれません。浮上させようとしても、途中で引っかかり上がってきません。引っかかっているフラクションの粘度が高いことも確認しています。このため、唾液を超音波処理しています。フィルトレーションでもうまくいきますが、サンプルのロスなどを考慮し、超音波法を採用しました。

Fig.6 スウィングロータによる平衡密度勾配遠心法プロトコール

 超音波処理した唾液を2,600×gで粗遠心した後、その上清を超遠心機Optima L-90K (Beckman Coulter)にてスウィングロータSW 32 Ti (38.5 mL Ultra-Clear tubes, #344058)を用いて160,000×g, 70分間4℃の条件で超遠心処理します。得られたペレットがエクソソーム粗分画(粗精製分画、エクソソーム+夾雑物)になります。このペレットを47% Iodixanol in 0.02 M HEPES/NaOH, pH 7.2 bufferに懸濁させ、47, 37, 28, 18% Iodixanol in 0.02 M HEPES/NaOH, pH 7.2 bufferのステップ密度勾配の中に入れます。この際、14 mL Ultra-Clear tubes (#344060, Beckman Coulter)を用い、スウィングロータSW 40 Tiにて、160,000×g、17時間、4℃の条件で超遠心処理を行います。密度勾配は、連続密度勾配作製装置を用いて調製してもかまいません。サンプルが多いときには、ステップで作製した方が実験は楽になります。遠心後、2.5mLずつ上からフラクション分けし、ナノ粒子トラッキング分析(NTA)、ウェスタンブロット、原子間力顕微鏡(AFM)にて確認を行います。
 得られたフラクションは、そのまま次の実験に用いる場合と、得られたフラクションを超遠心処理した後、PBS等で再懸濁させる場合があります。後に詳しく述べますが、洗浄の工程を入れるとエクソソームの多くの部分がロスするため、miRNA等を解析する場合はそのまま次の解析を行います。NTA等をそのままで解析する場合は、粘度等を補正する必要があり注意が必要なため、PBS等に置換して分析を行います。

iii. アングルロータによる精製

 超遠心法の最大のウィークポイントはスループットです。それを改善するためにアングルロータ(固定角ロータ)での密度勾配遠心を試みました。通常のスウィングロータは4または6本遠心できますが、アングルロータですとそれ以上の遠心が可能です。また、卓上型超遠心機Optima MAX-XPアングルロータTLA-110を用いることで、微量化と短時間化を実現しています。そのプロトコールをFig. 7に示しました。手順は先に述べた手順と同様ですが、遠心時間を大幅に短縮でき、さらに処理本数も6から8本に増加できました。このことにより、スウィングロータでは一日に1回が限度だった精製が、一日に2回行えるようになります。精製度合もスウィングロータと変わらず、問題なく行えます。

Fig.7 アングルロータによる平衡密度勾配遠心法プロトコール

iv. 注意点

 注意点となりますが、超遠心の微妙な条件の違いで得られる結果が異なってくることが、いくつか報告されています。そのため、ISEV(International Society for Extracellular Vesicles)等は、論文執筆時には、単純に×gと遠心時間だけを記載するのではなく、ロータの種類や用いたチューブも記載することが推奨されています。
 母乳からエクソソームを精製しようとしているグループも、やはり独特のプロトコールを作成しています 4)ので、体液に合わせたプロトコールを作っていく必要があるのかもしれません。
 最後に、エクソソームの研究を行う際は、かなりヘテロなものを扱っているのだということを認識する必要があります。基礎的な研究を行う際は、取りこぼしのない方法で精製することを意識する必要があります。このため、現状では超遠心法が第一選択肢となります。

参考文献
3)K Iwai et al., Journal of Extracellular Vesicles 2016, 5: 30829
4)Marijke I et al., Journal of Extracellular Vesicles 2014, 3: 24215

> Ⅳ. 精製したエクソソームの取扱い方法

芝 清隆 先生

公益財団法人がん研究会がん研究所
蛋白創製研究部 部長

詳しい略歴はこちら

岩井 千弥 先生

公益財団法人がん研究会がん研究所
蛋白創製研究部 研究生
東京歯科大学
口腔インプラント学講座

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山本 恵史 先生

公益財団法人がん研究会がん研究所
蛋白創製研究部 研究生
東京歯科大学
口腔インプラント学講座

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