生死細胞オートアナライザーVi-CELL XRによる
幹細胞の生存率、生細胞濃度測定

Introduction

幹細胞は、非常に小さい核と細胞質を有する白血球に類似しており、成熟した血球のいずれにも分化する能力を有しています。また、幹細胞はきわめてプリミティブで多能性があり、心臓および神経のような他の細胞種へ分化する能力を有しています。(1)
1968年以来、骨髄の幹細胞は白血病、リンパ腫、および免疫不全障害の治療に用いられてきました。(2)最近では、臍帯血および末梢血幹細胞が治療に用いられています。現在、幹細胞の主な供給源は、骨髄、臍帯血、および末梢血です。癌治療で用いられる化学療法や放射線は、骨髄にダメージを与え、骨髄抑制などを引き起こすため、幹細胞は、高用量化学療法または放射線治療後の造血幹細胞移植に用いられます。骨髄細胞の健康状態や幹細胞回収の難しさなどの要因に基づいて幹細胞の供給源の選択をおこないます。例えば、骨髄由来の幹細胞を回収する際には全身麻酔を必要とされる場合があります。アフェレシス法では、数日間にわたって、末梢血幹細胞を回収します。また、患者の骨髄に癌細胞が含まれている場合でも、健康な幹細胞が末梢血から得られることもあります。

多くの場合、幹細胞は供給源に依存せず将来の細胞移植に備えて凍結されています。幹細胞は、解凍した後、細胞生存率(Viability)と生細胞濃度を調べる必要があり(3)、多くの施設では、これらの測定を手動のトリパンブルー染色法で行っています。生死細胞オートアナライザー Vi-CELL XR(図1)は、手動のトリパンブルー染色色素を用いた細胞の生存率測定方を自動化しています。Vi-CELL XRを用いる事で、顕微鏡を用いた手動の細胞計数測定で問題になる人因性誤差を取り除く事ができます。本アプリケーション・ノートでは、Vi-CELL XRを用いた様々な供給源由来の幹細胞の細胞生存率および生細胞濃度を正確かつ精密に測定できることをご紹介いたします。

Vi-CELL XR
図1. Vi-CELL XR

Methods

ジョンズ・ホプキンス病院(米国メリーランド州ボルチモア)で、骨髄(n=16)および末梢血幹細胞(n=9)の凍結保存サンプル25個について試験を実施しました。細胞の単離には、標準のフィコール勾配分離法を用いました。(4)痕跡量以上の赤血球を含むサンプルは、塩化アンモニウムを用いて溶血しました。弊社は、塩化アンモニウム溶血試薬(IO Test 3、PN IM3514)を製造・販売しています。その他、溶血試薬としてVersaLyse(図2、PN IM3648)を用いることもできます。両試薬は、いずれも幹細胞膜に対してダメージが少なく、効率的に赤血球を取り除けます。

臍帯血はバプティスト病院(米国フロリダ州マイアミ)から入手し、弊社マイアミラボで分析しました。また、骨髄のサンプルは、マイアミの糖尿病研究所から入手し、フィコール勾配分離法を用いて分離したのち、Vi-CELL XRで測定をおこないました。
ジョンズ・ホプキンス病院での試験では、Vi-CELL XRでの計数測定に加え、コールターカウンターZ2(図3)を用いて計数測定を行い、結果を比較しました。また、Vi-CELL XRによる細胞生存率測定とマニュアルによるトリパンブルー染色法を比較しました。

Versalyse
図2. Versalyse

Results and Discussion

細胞数について2つの方法(Z2およびV-CELL XR)を比較したところ、有意な相関(p<0.0001)が得られました。
また、Vi-CELL XRおよびマニュアルによるトリパンブルー染色法から得られた細胞生存率間にも、有意な相関(p<0.0001)が得られました。
図4は、ジョンズ・ホプキンス病院のラボで単離した末梢血液幹細胞のVi-CELL XR画像データです。サイズ分布のグラフから、この細胞集団が5ミクロン以上であることがわかります。ジョンズ・ホプキンス病院サンプルのVi-CELL XR測定での平均細胞数は、1サンプルあたり2888個でした。マニュアルでは、血球計算盤を用いて約100細胞を計数しました。Vi-CELL XRを用いた方が多くの細胞を数えていることから、マニュアルで得られたデータと比較し、Vi-CELL XRを用いた方が、より統計的信頼度が高いといえます。
図5は、骨髄から単離した細胞のVi-CELL XR画像データです。細胞サンプルを「鮮明に」撮像していることが分かります。残留赤血球または他の混入細胞は、もしあったとしても少数しか存在しないことがこの画像から分かります。この細胞集団の下限径は約3ミクロンであることが分かります。

すでに述べたように、臍帯血は幹細胞の豊かな供給源です。臍帯血細胞がより「免疫学的にナイーブ」であり、移植の際、臍帯血細胞は他の供給源由来の細胞のように強い拒絶反応を起こさないと考える研究者もいます。図6は、Vi-CELL XR撮像した臍帯血細胞の画像データです。

コールターカウンター
図3. コールターカウンター Z2

Conclusions

生死細胞オートアナライザー Vi-CELL XR は、骨髄、末梢血、および臍帯血由来の幹細胞の細胞生存率と生細胞濃度の測定を自動でおこなうことができます。客観的で正確な測定結果がえられ、マニュアル法で除外できない測定者の主観を取り除くことができます。

大半の幹細胞集団が小さなサイズ(約3ミクロン)であったとしても、Vi-CELL XRを用いて鮮明な画像データを得ることができます。Vi-CELL XRとコールターカウンターZ2の細胞濃度測定の結果(n=25)では、高い相関が示されました。Vi-CELL XRとマニュアルによる血球計算盤を用いた細胞生存率の測定結果(n=25)にも有意な相関がみられました。

Vi-CELL XRを用いた臍帯血の分析関する詳細なプロトコルについては、A-1979A-JP 生死細胞オートアナライザーVi-CELL XRによる臍帯血細胞の生存率および生細胞濃度測定をご参照ください。

ジョンズ・ホプキンス病院の研究室で単離された末梢血液幹細胞の測定結果
図4. ジョンズ・ホプキンス病院の研究室で単離された末梢血液幹細胞の測定結果
骨髄サンプルから単離された細胞の測定結果
図5. 骨髄サンプルから単離された細胞の測定結果
臍帯血から単離された細胞の測定結果
図6. 臍帯血から単離された細胞の測定結果

Authors

Stephen E. Szabo, Ph.D.
Sarah Monroe, B.S.
Beckman Coulter, Inc.

Reference

  1. Jiang, Y., Balkrishna, N., Jahagirdar, R., et. al.
    Pluripotency of mesenchymal stem cells derived from adult marrow. Nature, Vol. 418, 41-49 (2002).
  2. Solakoglu, O. S., Maierhofer, C., et. al.
    Heterogeneous proliferative potential of occult metastatic cells in bone marrow of patients with solid epithelial tumors. PNAS, Vol. 99, No. 4, 2246-2251 (2002).
  3. Fiorino, S., Loper, K., Szabo, S., et. al.
    Evaluation of an Automated Viability Analyzer. Johns Hopkins Hospital, Poster. Presented at ISCT, 2003.
  4. Boyum, A. Separation of white blood cells.
    Nature, 204, 793-794 (1964).