超遠心分析法の測定原理

1. 測定原理

沈降法は粉体の粒度分布を求めるのに古くから用いられており、初期の装置としては、アンドレアゼンピペットが有名です。測定には数日を要し、頻繁なサンプリング操作と乾燥重量測定は煩雑なものでした。その約30万倍の加速度を用いる超遠心沈降法粒度分布測定装置は、ナノ粒子に焦点をあて「遠心中に起こるサンプル全体の沈降現象をリアルタイムで自動測定することができる分析装置」です。 試料となる溶液(縣濁液)を光が透過するセルに入れ、対照サンプルセルと共に、高速回転(最大回転数70,000rpm、最大加速度29万G)するローターにセットします。回転数と温度を精密に制御しつつ、測光時のみタイミングを合わせてフラッシュ光を照射し、セル内の位置による吸光度をスキャンします。セル内の粒子濃度分布情報は溶質(ナノ粒子)による吸光度変化(または光干渉縞の変位)として計測されます。さらに時間を追って測定を繰り返すことで、沈降現象による粒子濃度分布の変化を記録していきます。測定データは、セル内の各位置でのサンプル粒子濃度のグラフとして得られます。これらをLammの方程式を用いて解析し、粒度分布などを求めます。

1.1 2つの光学検出系 吸光(透過)とレーザー干渉

測定には2種の光学検出系が利用できます。一つは吸収光学系Absorbanceでもう一つは干渉光学系Interferenceです。

吸収光学系では光源にキセノンフラッシュランプを使い、回転中のセル(対照セルとサンプルセル)に、ある波長(UVや可視光)の光を照射します。数万rpmで回転しているセルに対してタイミングを合わせてフラッシュ光を当てます。さらにセルの半径方向(回転の中心側から外側の方向)に沿って、スキャンをして各位置でのサンプルによる吸光度を測定します。

干渉光学系には光源にレーザー(He-Ne)を用い、2つの小さいスリットでレーザー光を分離し、対照となる溶媒側セルとサンプルが含まれる溶液側セルにそれぞれ照射されます。セルを通過した光が作る屈折率の違いから生じる干渉縞(フリンジ)を、高感度CCDカメラで、セル全体の画像としてとらえ、そこから濃度分布情報を得ることができます。干渉検出系は吸収を持たないサンプルや高濃度溶液のサンプルに対して有効な検出法になります。

どちらの光学系も一定時間間隔(毎分数十回)でスキャン測定を行い、経時的な沈降パターン変化を得ることができます。

1.2 2つの測定方法 沈降速度法と沈降平衡法

超遠心分析法には大きく分けて2通りの測定方法があります。沈降速度法Sedimentation Velocityと沈降平衡法Sedimentation Equilibriumです。沈降速度法では沈降係数(s)や拡散係数(D)が得られ、粒子径や粒度分布が求められます。沈降平衡法では比較的低速でローターを回転させ,溶質の沈降と拡散が平衡に達した時点における濃度分布を観測します。 沈降平衡法で求められる分子量は高分子の形状によらないのが特徴です。分子量は測定溶媒中での溶質の状態を反映するもので、その溶質自身の会合体の有無や構成は、得られた分子量と単量体(モノマー)の分子量の比から求めることができます。タンパク質であればその4次構造を詳細に解析できます。

1.3 沈降速度法

溶質(微粒子)が、均一なのか、ブロードなのか、1ピークなのかマルチピークなのか、または凝集体が存在するのかといった情報は沈降速度法を用いて、全体の沈降パターンから解析できます。高分解能なので、例えば、抗体などのタンパク質製剤溶液中で会合状態が均質かどうか、凝集体が見られるかどうかなどを調べるのにも応用されています。 沈降速度法では拡散係数も同時に得られ、摩擦係数から形状情報を得ることができます。会合体タンパク質の場合、溶液中で棒状に連なっているのか、または球状に近いコンパクトな形をとっているのかなど大変有用な情報を得ることができます。

沈降速度法は比較的高い回転数で遠心を行い、溶質(微粒子)が沈降していく過程を、時間を追って観測します。遠心をかける前では全体が均質な濃度になっていますが、遠心が始まると試料(微粒子や高分子)が外側(ボトム側)に向かって移動を始め、その結果内側にはほとんど溶質が存在しない部分が生じます。内側と外側の濃度の境界を示すS字状の沈降界面が得られ、時間とともに外側(ボトム側)に向かって移動していきます。
超遠心分析法で、このように時間を追って濃度変化を測定する分析法を沈降速度法と呼びます。一般に重さの大きい溶質(微粒子)ほど速く沈降します。同一条件下で重さの違うサンプルを分析すれば、沈降界面の進み方に違いが現れます。いわゆる沈降係数は、サンプル固有の沈降の速さを表わしたものです。

沈降係数は温度や溶媒粘度、比重、試料高分子の形、排除体積(偏比容v barという)などにより影響を受けますので、測定を行う際には温度は厳密に制御され、解析にはこれらのファクターを加えて計算します。 このようにして沈降係数を算出する機能を XL-A及び XL-Iは備えています。沈降係数から、容易にStokes径を求めることができます。

1.4 拡散係数・摩擦係数と形状解析

超遠心沈降法ではS字状の沈降界面から重要な情報が得られます。 溶質自身の拡散が溶液中で全く起こっていないと仮定した場合、均質な分子集団では溶質すべての沈降速度は同一であるため、界面はシャープな一本の縦直線となります。しかし実際にはそのようなことはなく溶質同士または溶質と溶媒との摩擦により拡散がおこるため界面が拡がりにじんだようになります。このため生データのグラフはS字状になります。

拡散係数(D)が分かればEinstein-Sutherlandの式

から摩擦係数(f)が求まります。摩擦は形状によって大きく影響を受けます。実際この摩擦係数から分子形状が球とどのくらい違うかを議論することができます。高分子を回転楕円体として見た場合の長軸・短軸の軸比から扁平/偏長といった情報が得られます。