動的光散乱法の測定原理

5. 解析ソフトウエア

サブミクロン粒子アナライザーは、単分散モード解析とSDP解析の2種類の自己相関関数解析が可能です。自己相関関数の計測が終了すると自己相関関数の解析を行い、単分散モード解析では散乱強度による重み付けした平均粒子径と標準偏差を、SDP解析では粒子径分布を求めます。どちらの解析でも粒子径と分子量による結果が得られます。

単分散モード(UNIMODAL)解析とSDP(Size Distribution Processor)解析の比較

単分散モード解析は高速な解析方法で、散乱強度の重み付けによる平均粒子径と粒子径分布の標準偏差のみが分かります。単分散モード解析結果は、粒子径分布の多分散性が大きくなるほど、その正確さは低下します。真の粒度分布が複雑でも、多峰性分布でなければ、この解析で得られる平均粒子径は、サンプルを見る上でひとつの指標になります。標準偏差もサンプルの多分散性を見る上ですぐれた定性的な指標ですが、複雑な分布になると低い精度になります。(詳しくは後述)

SDP解析では、マルチピーク分布などの粒子径分布が求められます。ただし、正確なSDP解析を行うには、単分散モード解析の場合よりもS/N比の良い高精度の自己相関関数が必要になります。これは大きさの異なるすべての粒子からの自己相関関数(計測)から、各単一成分の自己相関関数へ数学的に分離する必要があるためです。自己相関関数の精度は蓄積される時間の長さの関数になります。したがって、SDP解析を行う場合は、測定時間を長めに取る必要があります。(詳しくは後述)

粒子径とMW(分子量)分析

MW(分子量)測定モードの単分散モード解析では、単分散モードの粒子径データが分子量に換算されます。SDPモード解析では、サンプルの分子量分布に必要なヒストグラムと関連する表データが得られます。どちらの場合でもMWモードでは、分子量を計算するためにサンプルに依存するaとbの2つのパラメータを入力する必要があります。

1. 単分散モード解析

自己相関関数が計測され、単分散モード解析では瞬時に解析されます。単分散モード分析を利用すると、サンプルの平均粒子径の測定と多分散性の測定つまり粒子径分布の広がりが測定できます。

最初にこの自己相関関数の全チャネルからベースラインが差し引かれます。ベースラインが差し引かれると自己相関関数の各チャネルの対数が計算されます。その結果、自己相関関数は、時間の二次級数で展開されます。

Ln (G (τi) - baseline) = a + bτi + 1/2cτi2 ・・・(5)

係数bとcは自己相関関数の第1次と第2次のキュムラントです。第1キュムラントの係数bは、2Γの平均値です。bは平均粒子径に反比例し、平均粒子径が求まります。あまり広くない分布の平均粒子径を見る上ですぐれた指標です。

・・・(5)

係数bとcは自己相関関数の第1次と第2次のキュムラントです。第1キュムラントの係数bは、2Γの平均値です。bは平均粒子径に反比例し、平均粒子径が求まります。あまり広くない分布の平均粒子径を見る上ですぐれた指標です。

・・・(6)
・・・(7)
多分散指数

(PI.)は次のように正規化され定義されます。

・・・(8)
単分散モード分子量

流体力学的径から分子量への変換はサンプルの従属パラメータaおよびbにより決まります。平均分子量の変換式は次のように表されます。

・・・(9)

ここで、
Dは式(1)で定義される拡散係数です。

流体力学的径の標準偏差から分子量の標準偏差への変換は粒子径のCVを用いて計算されます。

・・・(10)
ベースライン誤差

ベースライン誤差は、単分散モード解析において、測定した自己相関関数のベースラインと単一減衰曲線で計算したベースラインの一致度を示す尺度です。測定ベースラインとはデジタル自己相関器の最後の4チャネルの平均値です。計算ベースラインとは実質上「τ」が無限大に近づいたときの自己相関関数の値で散乱光と他のパラメータに基づきます。ベースライン誤差は次のように表されます。

・・・(18)

この誤差が大きい場合は、単分散モード解析においてデータの信頼性は低下します。

2. SDP解析 (CONTIN解析)

単分散モード解析は、二峰性など分布が複雑になると精度が下がるという制約があります。SDP解析はこうした制約のない粒子径分布が得られます。動的光散乱法は個々の粒子を計数しないので、大きさの異なる粒子による各減衰曲線の『総和』が計測され、それを数学的に分離する必要があります。この数学的な分離は難解な問題です。SDP解析で用いられるアルゴリズムはCONTINと呼ばれるプログラムをベースにしています。このプログラムは、PCSデータなどの解析に産業分野や科学分野で最も広く普及しています。

SDP解析ではサンプルの粒子径分布ヒストグラムが得られ、このヒストグラムを表形式やグラフ形式で表示したり、印刷したりすることができます。ヒストグラムは散乱強度分布を重量分布、個数分布に換算させることができます。強度分布から重量分布への変換はミー(Mie)式を用いるか(これには粒子の屈折率を入力する必要があります)、近似変換(粒子の屈折率が利用できない場合)を用います。これらは頻度分布ヒストグラムとして表示されます。位置、相対粒子径、および各ピークの広がりが自動的に計算され、SDPピーク(強度、重量、個数)を選択すると表でも表示されます。

自己相関関数の分離

測定される自己相関関数には、サンプルの粒子径分布に関する情報が含まれています。サンプルが同一の粒子(単分散)の集合の場合、自己相関関数は次式で表される単一減衰指数曲線となります。

・・・(11)

ここで、
G(τ) = 自己相関関数
Γ = 粒子径がdの粒子の減衰定数
サンプルが大きさの異なる粒子の混合(多分散)である場合、自己相関関数は粒子径ごとの減衰指数曲線の和になります。

・・・(12)

ここで、
ai = 粒子径diの全散乱光強度への寄与因子(%)

粒径比1:10 散乱強度比1:1の自己相関関数:一般的な装置
粒径比1:10 散乱強度比1:1の自己相関関数(対数τ):当社の装置

aiは粒子径ヒストグラムにおける各ヒストグラムビンの散乱強度%を表します。SDPプログラムは、計測した自己相関関数を基に、合成した自己相関関数を生成し、因子aiを推測します。これによりサンプル中の各粒子径の相対的な大きさが分かります。概念的には、ふたつの自己相関関数の差の二乗和が最小になるまでaiを系統立って変えるアルゴリズムが用いられます。求めた因子aiは必ず正の値です(これらは所定の大きさの粒子の相対量%を表すので、負の値はあり得ません)。aiが正である制約のほかに、CONTIN解析プログラムは最適な解を見つけるために正則化の定理も用います。

正確な粒度分布を求めるには、測定される自己相関関数の全体の形の特徴を正確に掴む必要があります。指数減衰曲線の曲がりが大きい部分は多くの情報を含み、高い分解能(短い時間間隔)で測定する必要があります。対数τ自己相関関数は、この点で有利です。また、自己相関関数の精度はS/N比によります。高いS/N比を得るために、測定回数(積算回数)を増やすことは重要です。

SDP分子量

粒子径分布から分子量分布への変換は、次式を用いてSDP内のビンを表している粒子径ごとに分子量に変換することで行います。

・・・(13)
ヒストグラムによる結果表示

SDP解析結果のヒストグラムは、指定された粒子径範囲に入る粒子の散乱光強度をパーセント値で示します。この分布を頻度分布と呼びます。ヒストグラムの粒子径ビンは対数間隔です。40本までの粒子径ビンをグラフに表示することができます。

ピークとモーメント

頻度ヒストグラムをさらに分析することで、粒子径の平均値とSD、および各ピークのパーセント強度が直接分かります。平均粒子径は次式で表されます。

・・・(14)

ここで、
i = ピークの平均粒子径
ai = ヒストグラムのi番目のビンの相対強度
di = i番目のビンに対応する粒子径

標準偏差(SD)は次式で表されます。

・・・(15)

各ピークの平均粒子径、SD、および相対強度に加え、すべてのピークを含むサンプルの全体分布に必要となる総合平均粒子径、標準偏差SD、および変動係数(CV)が分かります。総合平均粒子径とSDは、個別ピークの平均粒子径およびSDと同じ方法で定義されます。CVは次式で表されます。

・・・(16)
ダスト・大粒子の影響

SDP解析アルゴリズムでは、粒度分布ヒストグラムに使用されるビンのほかに、非常に大きな粒子が原因となって生じる散乱強度用のヒストグラムビンを追加できます。大きな粒子からの散乱のうち主なものは塵などのダストによるものなので、このビンは他のものと別に扱われてDUST(ダスト)ビンと称されます。ダストパラメータはパーセント量で、次式で表されます。

・・・(17)

サンプルによっては、ダストによる散乱強度がときとして、ヒストグラムのより大きな粒子径ビンのどれかの散乱強度のように見える場合があります。これは、自己相関関数のS/N比が十分に高くないため、SDPが大きな粒子を解像することができないときに発生します。動的光散乱法の弱点です。このビンにはDUSTとラベルが付きますが、減衰時間を遅らせる原因になるものはすべてここに含まれます。サンプル内の大きな粒子、泡、対流などがあります。これらは妨害物質のように測定精度と再現性を低下させます。

3. マルチアングル解析

大きな粒子は、狭角度の散乱光が大きくなります。小さな粒子は、大きな角度の散乱光を含みます。そのため、動的光散乱法では、ある一つの角度では、ある粒子径が見えにくくなることがあります。異なる多くの角度で測定することにより、この誤差を解消できます。

また、散乱光が弱い場合(粒子径が小さい場合や、濃度が非常に薄い場合)、狭角散乱は、多くの散乱体積を含むので、感度が向上します。

3つの角度で測定:低角度の方が大きい粒子を鋭敏に測定できる。
2種のラテックス粒子の混合比を変えて測定:低角度の方が、微量の大きな粒子を鋭敏に測定できる。