レーザ回折・散乱法粒子径分布測定装置の進化

4. レーザ回折・散乱乱粒子径分布測定法の弱点の克服 次世代の登場

1. 高精度、高分解能への挑戦、マルチ光学システムの開発

ベックマン・コールターはレーザ回折・散乱法に、新たに偏光散乱強度差法を追加した画期的な次世代のレーザ回折・散乱法粒子径分布測定装置LS13 320を開発しました。両測定原理を搭載したベックマン・コールター独自のマルチ光学系(図3)を採用することにより、測定範囲は0.017~2000μmと広範囲で、かつ高分解能になっています(特許)。 マルチ光学系は、レーザ回折・散乱乱測定系は360°配置した高密度の126個多角度ディテクタ群により大粒子の回折散乱パターンを計測し、大粒子側の粒子径分布を求めます。また、偏光散乱測定系(PIDS)は7個の側方散乱ディテクタを用いて、3つの異なる波長でナノレベル粒子の偏光散乱強度差を計測し、0.017μmから数μmまでの粒子径分布を求めます。

図4 350と500μm粒子の混合試料の散乱パターン

2. レーザ回折・散乱乱の測定領域における分解能の向上

レーザ回折・散乱法粒子径分布測定装置では、より多くのディテクタで検出し正確な散乱光パターンを取得できれば、微少な粒径の変化や複数成分(二峰性分布など)も正確に検出することができます。即ち、レーザ回折・散乱法粒子径分布測定装置の分解能の優劣は、第一はディテクタの数、第2は適正な配置に依存することになります。ディテクタを増やすと、演算パラメーターが増え、マトリックスが非常に複雑になりますが、優れたプログラミングにより、正しい演算処理を行えば、測定精度は大幅に向上します。

図4に、受光ディテクタ数に対するパターン計測精度を示します。この図は、350μmと500μm粒子の混合試料の光強度パターンを表しています。

LS13 320(回折散乱に対応する)のディテクタは126個であり、126個のディテクタによる光強度パターン(実線)は理論パターンとほぼ重なるものです。

一方、32個のディテクタの場合(点線)をみると、角度が大きくなると散乱光パターンの振幅情報と位相情報のどちらも悪くなっていることがわかします。350μmと500μm粒子の混合試料の散乱光パターンにおいて、極めて重要な第2ピークのスプリットを見逃し、このように能力的に限界のあるディテクタ配列を用いた測定装置では、このサンプルは1個のピークとして解析される。32個のディテクタでは重要な情報の多くを見逃すため、分布幅や個々にピークの鋭さに関する情報が正確には得られないということを意味しています。

図4 350と500μm粒子の混合試料の散乱パターン

上述したようにLS13 320の126個多角度ディテクタによる光強度パターンは理論パターンとほぼ同様であり、従って、LS13 320は分布幅や分布の個々にピークの鋭さに関する情報を正確に得ることができます。レーザ回折・散乱乱の測定領域における高分解能に関する測定例を、顕微鏡写真と共に図5、図6に示します。この近接した粒子径のサンプルの3ピークをきれいに再現できていることがわかります。ディテクタ数の少ない、または適正配置ではないレーザ回折・散乱乱測定装置では、近接したマルチピークの場合、1ピークのブロードな粒度分布データが出力されます。

図5 電子顕微鏡写真
図6 ミクロン領域の近接した混合物(3種混合)

3. 偏光散乱強度差法によるサブミクロン領域における分解能の向上

フラウンホーファー回折やミー散乱による粒子径分布測定の分解能に関して問題になるのは基本的にディテクタの数です。しかし、数を増やしたり、レーザの波長を短くしても、前述したようにサブミクロン粒子測定の解決策にはなりません。入射光の波長の半分以下になると粒子の散乱は非常によく似た散乱パターン(図2)をもつためです。これに変わるナノレベル粒子の測定技術として、PIDS(Polarization Intensity Differential Scattering)(特許)を開発しました。これは、入射光の波長より小さい微粒子の散乱光パターンの特性に基づくものです。その特性とは、微粒子による散乱が入射光の偏光の影響を受けやすいという現象です。入射光を、散乱平面に対して水平に偏光させることと垂直に偏光させます。水平偏光と垂直偏光の散乱光強度差(図7)(PIDS信号)は、検出角度に大きく依存し、散乱光強度差は入射光波長(450nm、600nm、900nm)に対する微粒子の大きさによっても異なります。従って、PIDS信号をいろいろな波長と角度で測定し、そのマトリックスを解析することにより、高分解能な微粒子サイズ情報を得ることができます。

図7 各粒子径に対するPIDS特異性

PIDS測定理論を用いた測定例を、電子顕微鏡と共に図8、図9、に示します。サブミクロン粒子領域を高分解能で測定ができるため、このように0.6μm以下の近接した3ピークを明瞭に分別することができます。従来のミー散乱によるレーザ回折・散乱乱測定装置では、1ピークのブロードな粒度分布データが出力されます。

図8 電子顕微鏡写真
図9 サブミクロン領域の近接した混合物(3種混合)

上述したように、126個多角度ディテクタ群を搭載したレーザ回折・散乱乱測定系により大粒子側を測定し、また、特許である偏光散乱強度差測定(PIDS)系によりナノ粒子を測定します。その中間域は、両方の測定パラメーターを用いて解析します。

図10 平均粒子径0.04μmと0.2μmの金属微粒子

さらに、PIDS測定系の情報のみを利用して、凝集粒子を除外した粒度分布データを得ることもできます。

図11 PIDS測定系を利用をした凝集粒子の除去測定データ