分析用超遠心機(AUC)の歴史
1920年代:スウェーデンで考案

1926年、コロイド化学における業績にてスベドベリはノーベル化学賞を受賞しました。分析用超遠心機の開発によって受賞したのではありません。

基本的な遠心機の初期モデルの登場はミルクからクリームを分離する能力が認識された150年以上昔に遡りますが、分析用超遠心機の歴史は1920年代のスウェーデンはウプサラの化学者テオドール・スベドベリ(Théodor Svedberg)から始まります。

ウプサラ大学においてコロイドの散乱、光吸収、沈降の物性研究に多忙であったスベドベリは、化学と遠心分離を組み合わせるという課題に次第に興味を抱くようになりました。 1923年、スベドベリはJ.B.ニコルズ(J. B. Nichols)やエンジニアのアルフ・リショルム(Alf Lysholm)といった同僚の助けを得て、最初の分析用超遠心機(42,000rpm, 900,000 x Gを達成、沈降の様子を観察する光学計を搭載)を開発しました。

テオドール・スベドベリ
(Théodor Svedberg)

スベドベリの方法は、今日のAUCに用いられているものと類似していました。タンパク質コロイド溶液は真空オイルにより密封された分析用セルの中に封じ込まれ、冷却システムを備えたドライブシャフト上のロータにセットされます。そのハウジング(訳注:サンプル容器)には2つの窓が備えられており、遠心分離中にUV光線によりサンプルを照らし、UVカメラにより分析画像を取得できるという方法です。1

スベドベリ(Svedberg)はこの初期AUCにより、タンパク質が1つの大きな単位に凝集し、分子量は17,500 Daであることを確信しました。スベドベリはこの業績により、単なるSvedbergではなく「the Svedberg」と呼ばれるようになりました。

当初、スベドベリは全てのタンパク質はこの基本単位が単に複数集まったものだと考えました(後に間違っていたことを学びました)。この最初の誤解にも関わらず、1926年、スベドベリは今日では沈降平衡法と呼ばれる測定法を用い、ヘモグロビンやオボアルブミンなどの複合タンパク質の分子量を決定した最初の研究者になりました。スベドベリは、タンパク質の構造に関する科学的知識に革新をもたらしたのです。スベドベリのオイルタービン超遠心機は、約20年のあいだタンパク質化学者に不可欠な装置であり続けました。2,3

その後もスベドベリは、可能な限り最も高速で回転するスピードに到達したと確信できるまで、新しいロータを設計・作製し続けました。言い伝えによると、彼はこの仕事の多くを自分のラボではなく遠く離れた森にある掘っ建て小屋で行っていたとのことです。リモートコントロールによって金属製ロータの回転スピードを次第に上げ、ロータが破壊に至るまでの限界回転数を精密に測定しました。それぞれのロータの爆発を記録するためにスベドベリは地震計を用いました。4

1926年にスベドベリはノーベル賞を受賞します。何人かの方が信じているような初の分析用超遠心機を作製したためではなく、コロイド化学の草分けとなる業績のためでした。スベドベリの研究により、タンパク質が共有結合によって結合した原子から成る高分子であることが証明されました。その後、AUCは生化学と分子生物学の分野における初期の発展のための基本的な技術となりました。5

1926年にスウェーデンでスベドベリと彼の同僚がその原理を確立してからしばらくの間、AUCはほとんど変化しませんでした。当時、この新技術が受け継がれ進化していくことはないかのように見えました。しかし、幸運にも、フランスやアメリカの影響力のある科学者らが進化の可能性を示したのです。

Svedberg with a colleague in 1926.
情報源:Encyclopedia Brittanica


1 Koehler CSW. Developing the ultracentrifuge. Today’s Chemist at Work 2003:(2)63-66.
2 Buie J. Evolution of the lab centrifuge. Lab Manager 2010;5(4):38-39.
3 Serdyuk IN, Zaccai NR, Zaccai J. Methods in molecular biophysics: structure, dynamics, function. 1st ed. New York (NY): Cambridge University Press; 2007.
4 Schuck P. Sedimentation velocity analytical ultracentrifugation: discrete species and size-distributions of macromolecules and particles. Boca Raton (FL): CRC Press; 2016.
5 Balbo A, Schuck P. Analytical ultracentrifugation in the study of protein self-association and heterogeneous protein-protein interactions. Protein Biophysics Resource, Division of Bioengineering & Physical Science, ORS, OD, National Institutes of Health, Bethesda, Maryland [cited 2016 Nov 2]