Vol.53 高速冷却遠心機の圧倒的な加速・減速能力の話

皆様 こんにちは

遠心機の加速および減速は短時間に越したことはないですよね?特に、設定遠心時間が短い場合は、設定回転数に素早く到達して欲しいものです。しかし、迅速な加速減速の役割はそれだけではありません。答えは「固有振動数」にあります。

皆様よくご存じのとおり、全ての「物」はそれぞれ固有の共振振動数をもっています。この振動数では、一旦外力が生じると、外部から力を加えなくても自分自身だけで振動し続けます。遠心ロータも例外ではありません。

加速中の遠心ロータでお話ししましょう。
たとえば、高速冷却遠心機Avantiシリーズに対応している最高回転数10,000rpmの固定角ロータJA-106×500mL)は、ロータ本体重量が22kgでサンプル重量が約3kgです。遠心時にはこの合計約25kgのロータが0rpmから10,000rpmまで一気に加速するわけですが、その際には固有振動数(= クリティカルポイント)を通過しなくてはなりません。クリティカルポイントでは、回転エネルギーは振動エネルギーと歳差運動エネルギーに変換されます。つまり、重さ25kgの物体が振動と歳差運動を始めるのです!!「おーーーーーー怖い」です。遠心機では、このクリティカルポイント通過時間が長引くのは大変危険な状態であると言えます。

ロータの歳差運動

1. 遠心開始
安定

2. クリティカルポイント
歳差運動が始まる

3. 定常遠心
安定

さて、このクリティカルポイントを極力素早く通過するためにベックマン・コールターが開発したのが、高速冷却遠心機Avantiシリーズに組み込まれているSR駆動部(Switched Reluctance Drive)です。

SR駆動部の概念図

SR駆動部の特長は、その大きなトルクと高速回転です。駆動部の中心には鉄製の回転子(十文字型です。コイルなどはいっさいありません)、その回転子の周りには電磁石が6か所あります。このシンプルかつ強力なトルクを発生するSR駆動部が、重さ合計約25kgのロータをわずか2分少々で10,000rpmまで加速させます。そのため、ロータが振動と歳差運動を開始する余地はありません。

その「2分少々」がどのくらい速いのか。下の加速・減速比較グラフをご覧ください。

加速・減速比較グラフ

このグラフは、Beckman Coulterが高機能高速冷却遠心機Avantiシリーズを発表した時のデータを参考に作成したものです。その圧倒的な加速・減速能力をご理解いただけると思います。

たとえば、培養した大腸菌を「回転数10,000rpm、遠心設定時間10分」で集菌する場合、わずか12分弱で遠心完了できます。

今回は、高機能高速冷却遠心機Avantiシリーズの圧倒的な加速・減速能力についてご紹介しました。ちなみに、SR駆動部には「火花を出す整流子を使用していないため、引火性の溶液を遠心する場合もリスクヘッジが可能」という特長もあります。

最後までお読みいただきありがとうございました。また次回!