Vol.52 センターピースが扇型だから、溶質濃度が変化する?

皆様 こんにちは。

今回は、前号の「Vol.51 分析用超遠心機のセンターピースはなぜ「扇型」?」で出題しましたクイズ「分析用超遠心機にて使用するサンプルの入れ物であるセンターピースが扇型をしていることにより、溶質濃度(光学系により測定されるAbs値)は変化するでしょうか。もし溶質濃度が変化するとしたら、その現象の名前はなんと言うでしょうか。」の解答をお届けいたします。

まず、遠心分離の基本を復習しましょう。
たとえば、泥の粒子で濁った水を細長いガラス瓶(メスシリンダーを想像してください)に入れて静置すると、【図1】左から【図1】右へ変化しますよね。このメスシリンダーはどの高さにおいても断面積は同じです(上部から底部まですべての断面は円形であり同じ面積です)。全ての粒子は垂直(メスシリンダーの内壁と平行)に移動しますから、粒子が内壁に衝突することはありません。

メスシリンダーの断面
【図1】 メスシリンダーの断面

ここで、分析用超遠心機にて使用するサンプルの入れ物であるセンターピースの形を思い出してください。扇型、でしたね(その理由は、遠心の中心である「扇の要」から放射状に移動する全てのサンプル粒子が側面に衝突しないようにするため、でした)。つまり、【図1】のようなメスシリンダー型とは異なり、扇型をしているセンターピースの断面積は高さにより変化します(【図2】)。

センターピースの断面積
【図2】 センターピースの断面積

次に、センターピースの拡大図(【図3】)をご覧ください。r1(時間 t1の時の界面)とr2(時間t2の時の界面)は扇の要(遠心の中心)からの距離なのですが、r1とr2の移動境界面の面積が異なることがご理解いただけると思います。つまり、遠心時間の経過とともにこの移動境界面の面積は大きくなっていきます。

センターピースの拡大図
【図3】 センターピースの拡大図

【クイズの答え】
皆様、すでに答えがお分かりですね!!
粒子濃度不変領域で移動境界面の断面積が次第に大きくなっていくということは、見かけの粒子濃度が小さくなることを意味しますので…、センターピースが扇型をしていることにより、溶質濃度(光学系により測定されるAbs値)は変化します。この現象は Radial Dilution(ラジアル ダイリューション)と名付けられました。

超遠心分析では、粒子が沈降していく速度を「移動境界面の速度」を測定することにより各種データを算出します。そして、この Radial Dilution の影響も加味した粒子の挙動を1つの式(【式1】)で表現したのがあの有名なラムちゃん(Lamm 氏)です。 Lamm 氏は、分析用超遠心機の生みの親である Svedberg 先生のお部屋で研究されていた1929年に、この大変重要な式を考案したのでした。

Lamm Equation
【式1】 Lamm Equation