Vol.10 卓上型超遠心機TL-100発表の思い出

このコーナーも何回続けることができるだろうかと思いながらスタートしましたが、なんとか10回目にたどり着きました。
そこで今回は、少し趣向を変えて思い出話をさせてください。

1984年4月、桜の花びらが舞う東京大学駒場キャンパスで農芸化学会が開催されていました。
その附設展示会の会場である体育館は、これまでの概念を打ち破る新たな機器の発表に異様なほどの注目が集まっていました。
その機器が卓上型超遠心機TL-100です。いまでこそ、この大きさと容量の超遠心機は当たり前になっていますが、当時は超遠心機といえば、フロア型の大きな機器しかありませんでした。
それが本体は小さな卓上型になり、ロータは手のひらに載るほどの大きさに、しかも回転数は100,000rpmというこれまでにないスペックで登場したのです。それにより研究者は、少量のサンプルから手軽な操作で短時間に、目的の者を分離抽出することができるようになったのです。

1984年発表の卓上型超遠心機TL-100

この展示会のベックマンブースではこのTL-100がいかに本体とロータが小さいか、いかに手軽な操作性か、いかにスピーディに100,000 rpmまで到達するかなどを披露していました。
3日間続いた展示会でしたが、3台並べられたTL-100の周りに何重にもなった人集りができて、それが日を追うごとに大きな輪になっていったのです。展示員はひとりひとりに機器説明をするのではなく、いつのまにか大声で人集りに向かって説明していました。
後から聞いた話ですが、この展示会開催中に学会員の方々にこの新製品がかなりの話題になり、それが口コミで広がったようなのです。これにはベックマンブースで配られたTL-100の写真が描かれた紙袋が一役買っているようでした。 こんなに忙しく休む暇もないくらい慌ただしい展示会だったのですが、展示員はその反響の大きさに、疲れることを忘れるくらいに説明しまくっていました。

ベックマン遠心機が世界に先駆けて日本で一大センセーションを巻き起こした瞬間でした。
この卓上型超遠心機TL-100の遺伝子は、現在に至るまで形を変えて受け継がれOptima MAXシリーズという名前で世界中で活躍しています。感慨深いものがあります。