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Oct 2018

10カラーフローサイトメトリーを用いた細胞マーカー解析の有用性

兵庫県立がんセンター
検査部長 / 血液内科部長(診療科長)/ 血液・輸血検査室長
村山 徹 先生

兵庫県立がんセンター(兵庫県明石市: 400床)は「科学と信頼に基づいた最良のがん医療の推進」を基本理念に、地域に密着した医療を提供している。2017年12月に検査部血液検査室では、ベックマン・コールターのNavios EXハイエンドクリニカルフローサイトメーターの最上位モデルとなる3レーザー10カラーモデルを導入し、10カラー解析を実施することで、従来の検査方法の約4倍の細胞表面マーカーの同時解析を実施することが可能となった。これにより、フローサイトメトリー検査結果の精度・信頼性が飛躍的に高まった。
10カラー解析の導入について検査部長の村山先生にお話を伺った。

フローサイトメトリー検査の必要性

がんセンターを受診される血液疾患の患者数について村山先生は、
「患者さんの数は、全体的には増えていると感じています。ただ、東播磨のエリアでは加古川中央市民病院や北播磨総合医療センターに血液内科が新設されておりますので、それに伴って患者さんもそれぞれの医療機関で受診されているため、がんセンターを受診される患者さんの数は微増といった状況です。
がんセンターの初診患者さんの約6割から7割は悪性リンパ腫であるのが数年来の傾向ですが、最近増えてきているのは多発性骨髄腫の患者さんです。2016年度では初診患者さんの約10%であり、悪性リンパ腫の患者さんと合わせると8割近くになります。」と話す。
そして、「がんセンターではこれらの疾患に対する診断や経過観察において細胞表面マーカー解析が必要であるため、フローサイトメーターが不可欠なものとなっています。」と続けた。

マルチカラーフローサイトメトリーへの期待

長年フローサイトメトリー検査に携わっている村山先生は、「より少ない細胞で検査が実施できるため、診断に有用な情報が得られるようになることを非常に期待している。」と非常に強く10カラー解析の導入による検査結果の向上についての期待を示した*1
さらに、「多発性骨髄腫のMRD(Minimal Residual Disease: 微少残存病変)を測定することができると思いますし、リンパ腫の診断においても胃の中から腹腔内リンパ節の組織を内視鏡で採ることができるようになり、細胞がものすごく少ない検体であっても、腫瘍がリンパ腫かどうかを決めるといったことができるようになると期待しています。特に多発性骨髄腫のMRD測定に関しては、いろいろな測定方法が考えられています。
専門家の先生方と話をしていても次世代シーケンサーでは検査費用が高額で日常診療に使うのはなかなか難しい。でも保険点数2,000点のフローサイトでしたら適任だと思いますし、それが10カラーで実現できれば検査室でルーチンワークとして行っていけると思っています。」と展望についても話をされた。

*1)現在、国内のフローサイトメトリーによる細胞マーカー検査で主流なのは3カラー解析であり、これは1サンプルから同時に調べられる細胞マーカーは2 種類程度である。
多種のマーカーを解析したい場合では、多い場合は10種類以上のサンプルを検体から調製し、得られた一連の結果をつなぎ合わせて目的細胞のマーカー発現パターンを解析する。
そのため、検体中の目的細胞が少ない場合では、つなぎ合わせた結果からでは本当の発現パターンがわからない場合があるだけでなく、検体の細胞数が少なければ調製できるサンプル数が少なくなり、解析できるマーカー数も制限される。
しかしながら、10カラー解析では同時にゲート内細胞マーカーを8種類以上解析することができるため、検体中に微少に存在する異常細胞も、マーカーの異常発現パターンから見つけ出すことが可能になる。
そして、サンプル1つの結果から得られる情報も4倍以上となるため、調製が必要なサンプル数も約1/4となり、検査実施に必要とする細胞数は3カラー解析に比べて格段と少なくなる。

10カラー解析を始めて

実際に10カラー解析を導入したことで、「今までできなかった部分ができる形になっている。」と村山先生は話す。その一つの例を村山先生に挙げていただいた。

「髄液中の少ない異常細胞を調べることが今までのフローサイトではなかなか難しい面がありましたが、今では階層ゲートを使ってうまく腫瘍細胞を分けられるので、診断精度が上がっているかなと。髄液の検体では1 μL中の細胞数が数個と非常に少ない上に、形態を見ても髄液という環境だと分かりにくい場合が多くて、細胞診を依頼してもあまり色よい返事が返ってこない。
今までのフローサイトでは細胞数が少なすぎて分からないという状況でしたが、10カラー解析では少ない細胞の中に存在するリンパ球が正常なのか異常なのかがフローサイトで分かるようになってきている。そうなると、治療の決定ができるようになります。」

そして、村山先生はその成果が少しずつ臨床医と血液検査室の間に良い影響を及ぼし始めていると続けた。

「マルチカラーになったおかげで、階層ゲーティングが可能になったので、これが陽性でこれが陰性のここの細胞を解析しましたよ、こういうものですよっていうことが分かるようになってきました。階層ゲートを臨床医が見るとやっぱりすごいなと。
今までのSSとCD45の展開を見て、そこに丸を付けてゲートするのとは違いがあります。そのあたりに臨床医も興味を持ってきましたし、階層ゲートの結果が欲しいがために今まで外注に出した検査を院内に戻してくれています。
血液内科の医者がデータを信頼して検査依頼を出してくれるようになるから、余計にまた技師の方もそれに応えるために頑張ってくれています。」

フローサイトメトリー検査の今後の課題

村山先生は今後のフローサイトメトリー検査の課題についても指摘している。

「フローサイトメトリー検査っていうのは30年ぐらい前から普通に臨床で使われている検査であって、決して特殊な検査ではないのです。それなりの件数がある検査であるにもかかわらず、ずっと外注にしていると技師たちがフローサイトは特殊な検査だという認識を持ってしまいます。
がんセンターでは10年ぐらい前から機械を導入して、最初は医者がやっていましたけれども、現在は検査技師に院内でやってもらうようにしています。そうしないと、ずっとフローサイトは特殊検査という認識を検査技師が持ってしまうことで技術の進歩についていけなくなるので。
フローサイトは特殊な検査ではありませんし、収支も合います。ある程度の件数があれば、院内でやる。そして、ベックマン・コールターのフローサイトメーターがどんどん進化していけば、それに合わせて技師のスキルアップもしていくということが必要なのかなと思っています。
そして、検査技師それぞれが技術研修していく中で、フローサイトに興味を持って欲しいと思っています。中堅になると新しい技術に興味を持って自分の専門にしていこうという検査技師はなかなか生まれない。
いかにしてフローサイトの検査を若い技師に経験してもらうかが重要なのだと思っています。サイトメトリーの専門資格を取って、やっていくのだっていうぐらいの人が何年かに1人は出てきて欲しいと思っているのですが、それがまた難しい。
幸いにして、うちの血液検査室は若い検査技師が多く、もっと幸いなことに大学院とかでフローサイトを使用していた検査技師もいるので、その中で興味を持って、いろいろとアイデアを示してくれればいいかなと思っています。」

今後の血液・輸血検査室の展望

最後に村山先生は「がんセンターでは、フローサイトをがんの診療にどれだけ使えるかということを考えます。今後、いろんな新薬が出てくる上で、リンパ球とかの免疫状態とかを調べなくてはいけないような状況が必ず出てくると思っています。
血液内科では、既にそのような状況がありますが、固形腫瘍に関しても、特に抗体薬や免疫チェックポイント阻害薬などを実施していく時に、気軽に院内で免疫状態を測定できるということが新しい治療法へも対応できていくのではないかと考えています。
治療が進歩していく上で、それに合わせていろんなことを評価しなければならないので、それの一翼を担いたいと思っております。」と今後の展望について話をされた。

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