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September 2017

堆積地質学の研究における粒度分布測定

国立大学法人 信州大学 学術研究院理学系 地質学領域
教授 保柳 康一 先生

国立大学法人 信州大学 学術研究院理学系 地質学領域 保柳 康一 先生は、地層の分析のためにレーザー回折散乱法粒度分布測定装置を使用されています。今回、先生の研究における粒度分布測定と今後の展望についてお話を伺いました。

国立大学法人 信州大学
国立大学法人 信州大学 学術研究院理学系 地質学領域 保柳 康一 先生

堆積物の正確な測定が分析の第一歩

私の研究は、簡単に言うと地層、つまり過去の堆積物から情報を取り出し、過去の出来事を復元することです。例えば東日本大震災の際にも残された津波堆積物や地球温暖化や寒冷化による海水面の変動によって作られた地層を分析するのですが、その研究の最初の段階として粒度分布を測定しています。そして、粒度分布測定に加えて見た目(水の流れがつくる構造)などの堆積物の物理的性質、さらに様々な化学的な分析、含まれる化石の分析も行い、これらの解析結果を合わせて、その堆積物が津波によるものなのか洪水によるものなのか、また、海水面が上がった時あるいは下がった時のものなのかなどの成因を結論します。

分析にあたり、地層に含まれる泥、砂、礫(れき)の粒子の大きさは最も基本的な情報です。粒子の大きさを正確に測定することは非常に重要なのですが、堆積物は様々な大きさの粒子からなるため、極めて難しい分析になります。

研究の最初のステップとして、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置を使用して地層の粒度分布や平均粒径を測定しています。ただ、硬い岩石については、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置では粒度分布を測定することはできません。顕微鏡による測定では切断面によって大きさが異なるため正確な粒度を知ることができません。場合によっては、化学的な測定値から、例えば「シリカが多いから(粒度が)少し粗い」などというように考えるのですが、これは解析とは言えないかもしれません。そのため、粒子に分解できるぎりぎりの硬さまでの地層を対象にして粒度分布を測定しています。粒子径や粒度分布は化学組成にもある程度影響を持ちますが、基本的には物質的、物理的な独立した事象であるため、堆積学、地学の分野では重要視されます。

国立大学法人 信州大学 学術研究院理学系 地質学領域 保柳 康一 先生

研究者の経験と一致する、ベックマンの設計

私は、1997年頃からベックマンの装置を使っています。当時は装置を持っておらず、石油公団(現 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が所有していたLS230を使っていました。多くのサンプルを持ち込み、1週間ほど泊まり込みでひたすら測定していました。その時に非常に良い機械であることを実感し、そのデータを使って論文を執筆いたしました。

ボーリングコアから掻き取り、泥や砂などの含まれているものや粒子径をルーペや実体顕微鏡で見て記録しています。粘土だけなのか、少し粗い石英粒子が混ざっているのか、もしくは泥に見えるが少し砂が入っている…などを判別できる人間の目は非常にセンシティブなセンサーですが、数値化することはできません。数値化するために分析装置を使うのですが、装置によっては、見えているものと大きく乖離した数値が出ることがあります。しかし、ベックマンの粒度分布測定装置は、的確に測定がなされればかけ離れた値が絶対に出ない。見えているままを数値化してくれます。研究者が持っている経験と一致しているということは、ベックマンが長い経験を基に装置を設計していることが分かります。ですので、信頼して使用しています。

国立大学法人 信州大学 学術研究院理学系 地質学領域 保柳 康一 先生

粒子径を基軸に堆積物を分析

X線透過写真と堆積物の平均粒子径を比較した図Ⅰをご覧ください。平均粒子径は、深くなるほど凸凹しながら大きくなっていることがわかります。X線透過写真も、縞模様になっている部分から徐々に粗くなっていることがわかります。この様な微妙な粒度の違いを手掛かりとして、さらに含まれる化石、硫黄量や炭素量などを分析して解析していきます。これらのデータは大量に分析する必要があるため、最初に測定する粒度は,短時間で客観的に測定できることが基本です。

図Ⅰ(出典)Island Arc (2009) Vol.18, p.325

図Ⅰ
(出典)Island Arc (2009) Vol.18, p.325

さらに別の例ですが(図Ⅱ)、平均粒子径が小さくなっている部分(深度20 m)は、日本が今よりも少し暖かく海水面が高かった約6,000年前の縄文時代の海進にあたります。この地層には特有の化学組成があり、硫黄が多く、含まれる有機物の組成に特徴があります。

図Ⅱ(出典)Incised Valleys in Time and Space, Special Publication No. 85 (2006), SEPM (Society for Sedimentary Geology), p.106

図Ⅱ
(出典)Incised Valleys in Time and Space, Special Publication No. 85 (2006),
SEPM (Society for Sedimentary Geology), p.106

通常、海水中には硫黄が多く含まれます。しかし、火山活動や温泉活動がなければ、淡水中には硫黄は全く含まれていません。また、堆積物中には有機炭素が多く含まれます。これらの前提から、例えば、粒子径が大きい地層において硫黄が含まれず陸起源の有機物の濃度が上昇している場合には、山地から砂を含んだ淡水が流れ込んできたのではと考えます。図Ⅱでは、有機炭素の陸起源と海洋起源の割合と粒子径が変動している様子が分かります.このように、様々な科学的知見を基に検証を行っていくために、私達は地層中の粒子の大きさの分布を知ることが重要と考え研究を進めています。

ミリ単位でも簡単に分析できる

国立大学法人 信州大学 学術研究院理学系 地質学領域 保柳 康一 先生

「ジョイデス・レゾリューション号」という深海掘削船があります。この船で採取したニュージャージー沖(米国東海岸)の泥を分析し、海水准変動に関する掘削調査を行いました。1997年に執筆した論文のデータが図Ⅲです。これは砂や泥の粒度分布を解析しています。海底下300m付近までは0.04 µmの非常に細かい部分から泥が含まれていますが(図Ⅲ A,B)、300m付近からはなくなっていました(図Ⅲ C)。この違いから、泥の構成物が海底下300m付近から粘土粒子ではなく小さな化石に変わっていることがわかりました。

図Ⅲ(出典)Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results Volume 174A

図Ⅲ
(出典)Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results Volume 174A

この化石は円石藻という石灰質の殻を持った径32 µmほどのプランクトン遺骸で、生きている時はギアが組み合わさったような特徴的な形をしています。しかし、そのまま化石として地層中に保存されるになることは少なく、1 µmから5 µmくらいのギア状のものがバラバラに分かれて地層中に保存され、粘土粒子がほとんど無いので一番細かい粒度の部分がなくなっていたのです。

この時代のニュージャージー沖では海水面が非常に大きく上がり、陸側からではなく海側から来たこのプランクトンに由来する堆積物ができたと考えられます。この時は、粒度分布のデータを見て何かおかしいと感じ、顕微鏡で観察してこれらの事を突き止めました。化石のもつ構造から一定の大きさに壊れるので、この様な特徴的な粒度分布を示すのですが、非常に面白いと感じました。

地層の粒度分布は、それぞれの堆積物をつくる材料に依存します。ですが、その一つ一つを顕微鏡で観察することは分量的にも時間的にも非常に困難です。例えば、この1997年のニュージャージー沖での調査では500~600mを掘削しており、また2009年のニュージーランド沖での調査では約2,000mを掘削しました。この掘削したコアを1~5mおきに掻き取って分析するので、非常に多くのサンプルを処理することになります。必要な場合は、5~10cm単位で分析を行うこともあります。また、私たちのサンプルは量が取れないことも重要なポイントになります。細かい違いを知りたい場合は数cm毎に測定するため、少量しかサンプルを使えません。ベックマンのレーザー回折装置は1cm刻みでも場合によってはmm単位でもすばやく簡単に分析できるため、重宝しています。

津波か高潮かを粒度分布で判別できるようになりたい

現在は、南相馬で過去1万年間にどのぐらいの頻度で津波が起きたのかを調べています。ここでは、過去1万年間に約26.5メートルの地層が堆積しており、その中に砂の層が何層も入っていました。砂層には貝殻が含まれているため、これらの砂は海側から来たことが示唆されます。その要因が津波と高潮のどちらなのかを区別できれば、南相馬において津波がどれくらいの頻度で発生してきたのかが分かります。500~1,000年に一度、非常に大きな津波が起きている事が分かっていますので、これらの砂の層の要因はほとんどが津波ではないかと考えています。

津波か高潮かの判別を、堆積物における粒度分布のパターンで判別できるようになりたいと考えています。津波堆積物と例えば台風が原因の高潮堆積物の粒度分布の違いが分かれば、両者の判別に役に立つと思います。海の砂と川の砂は比較的判別しやすいのですが、津波と高潮は両方とも海の砂のため、現時点ではその判別は非常に難しいと言えます。

国立大学法人 信州大学 学術研究院理学系 地質学領域 保柳 康一 先生

津波の専門家は、例えば津波のほうが高潮より広範囲に影響があるということや、地震と地盤の沈降の関係など様々な事から総合して、堆積物の成因が津波であったのだろうと考えます。地震が起きると、地盤が隆起する場所と沈降する場所があります。津波により海から陸に砂もたらされ、さらに沈降した地盤に海が入ってくるという組み合わせが地層中に認められると、その地層は津波によるものと結論できます。粒度分布に関しては、ある程度「(津波があった場所の地層は)こんな積み重なりをしている」という推定なされていますが、なかなか決定打がない状況です。

丈夫で壊れない装置で助かっています

前の装置(LS230)は、大量のサンプルを測定するためポンプへの負荷を心配していましたが、15年くらい使用して、ポンプを交換することなく更新しました。

また、泥や砂を扱うため、時には釣り針の破片が入っていたり、ナイロンの糸がついていたりすることもあります。使用後の念入りな洗浄が重要なのですが、徹底することはなかなか難しい。ベックマンの機械は丈夫で壊れないということで非常に助かっています。決して綺麗ではないサンプルを測定するため、ぬめりによって弁の動きが鈍ることがありましたが、その時はドライバーの持ち手で「ガン」と叩いていましたが壊れませんでした(笑)。

国立大学法人 信州大学 学術研究院理学系 地質学領域 保柳 康一 先生

学生が「先生、動かないんですが…」と来たら、ドライバーで「ガン」と直す。「いいんですか?それで…」と心配されますが、「大丈夫、大丈夫」と答えていました。数年前ですが、学生が寝ぼけてキムワイプを吸い込ませてしまい、ポンプに詰まらせてしまった時は、もうこれで駄目かなと思いましたが、分解洗浄していただき、また使えるようになりました。

国立大学法人 信州大学 学術研究院理学系 地質学領域 保柳 康一 先生

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